生まれてはじめてちゃんとした悲鳴を聞いた。そして悲鳴というのは、声がないのだということをその時知った。今まで聞いてきた歓声のような悲鳴や唸るような悲鳴しか聞いてこなかっただけに、その悲鳴は黄瀬にとって衝撃的だった。
 そんな黄瀬に衝撃を与えた高尾は、手で顔を覆いながらも、指の間から目をぎょろりと覗かせている。その目線は見たものを呪わんばかりに禍々しい。
 実際、高尾が黄瀬に抱いたものは紛れもない殺意そのものだ。今まで向けられたことのない種類の殺意に、黄瀬は背筋がぞわりと震えた。怖い。
「お前、なんて」
 漏れた声には、普段のような明るさはない。あるのはただ、殺意や憎しみしかない。たかだか高校生のくせに。緑間でもないくせに。なぜ、お前が。
 高尾から向けられるものに耐えながら、それでも黄瀬は自分を曲げることはなかった。なんせ黄瀬は、緑間が認めていても、高尾を認めているわけではないのだ。
 だいたい、緑間の努力を、黄瀬が知らないとでも思っているのだろうか。それこそ、甚だしい。
 高尾から嗚咽が漏れる。よく見れば、顔を覆う手が濡れている。どうやら泣いてしまったらしい。だが、黄瀬はそんな高尾を同情することはなかった。むしろ、緑間の技をまるで自分の物のように扱っている高尾に、少しだけ腹が立ったくらいで。



間接的殺人
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