スラムで共に暮らしているはずなのに、なぜアリババは汚くならないのだろう。とカシムは昔から考えていた。アリババはきっとそんなカシムに気付かないだろうし、妹のマリアムもまだ小さいから気付かない。もっと言えば、カシムとアリババの仲の良さを知る者は誰も気付かないだろう。それくらいカシムはひた隠しにし続けた。だってカシムは、アリババが大好きだから。

 アリババの母であるアニスと共に暮らすようになり、カシムはますますアリババの綺麗さに疑問を抱き続けた。けれどまだこの時はアリババが実は王族だということがわかる前だったので、カシムはこんな素晴らしい母親がいるからかとアリババに羨望した。
 そんなことも知らず、アリババはカシムを兄のように慕った。友達であることが前提ではあるが、家族になったことで無意識だろうが、そうしている。カシムは、そんなアリババを見るたびに、惨めな気持ちになる。
 なんで俺はこいつの本当の兄ではないのだろう。本当の兄だったならば、アリババには自分と同じ汚れた血が流れているとわかるのに。本当の兄だったならば、自分にはアリババと同じ綺麗な血が流れているとわかるのに。
 唇を噛み締める。俺はアリババを嫌いになりたくないのに。唇が切れ、血が滲む。まずい。汚れた血だからだ。アリババならば、まずくはないだろう。
「カシム!」
 アリババは何も知らない。誰も何も知らない。カシムがアリババをどう思っているかだなんて。アリババがあまりにも眩しすぎて、もはやアリババを直視出来ないということを。



もう嫌です
/じゅんじゅんおめでとう!
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