最近露草がアルバイトを始めたらしい。聞けば親でガーデニングアーティストである白緑の伝を頼りに、花屋で働きだしたのだという。鴇時は露草と遊ぶ時間が減ったと嘆きながら、篠ノ女の家に入り浸る時間が増えた。
 なら梵天とでも遊んでこいよと思ったが(ちなみに朽葉は沙門の手伝いや剣道、平八はコンビニでアルバイトだ)篠ノ女自身があまり梵天を好きではないので、口には出さなかった。
 それに、鴇時は篠ノ女の家に入り浸るとは言っても、だいたい寝ているかボーッとしているかだ。恐らく篠ノ女の料理が美味しくなければ、鴇時は篠ノ女の家に来ることもない。得をしているのか損をしているのかはわからないが、とりあえず鴇時が美味しい! と笑顔で言うので得だと考える。


 いつものように鴇時が篠ノ女の家にやって来た。もはや合鍵を渡してしまっているので呼び鈴もない。篠ノ女ー、という呼び声で鴇時の訪問がわかる。読んでいた本に栞を挟み、玄関までいく。たまに鴇時が篠ノ女宛の郵便物を持っていたりするからだ。
 玄関までいくと、鴇時が何やらビニール袋をぶら下げていた。郵便物はない。それなんだよと聞くと、鴇時は困ったように笑った。
「いやー、露草がんばってるかなぁって花屋行ったらこれくれて」
 これ、と言われたビニール袋の中身を覗くと、黄色い花が植えられた鉢が入っていた。これは確かパンジーだな。篠ノ女は膨大な知識から花の名前を当てる。
 鴇時は尚も困ったように笑いながら、どうしようと漏らす。
「なんだよ、いらねぇのか?」
「だってなんかさ、枯らしそうで」
「あー……お前って朝顔とか枯らすタイプだよな」
「う……あー、どうしよう……」
 篠ノ女は、鴇時が自分の目の前で困った素振りを見せられるたびに、ワザとかと問いたくなる。だが残念なことにこれが鴇時の素なのだから、質が悪い。篠ノ女はため息を吐く。そしてビニール袋を奪う。
「篠ノ女?」
「どうせ俺んとこにいるほうが長いんだから、ここに置いたらいいだろ?」
「篠ノ女……!ありがとう!」
 ぱぁ、と綻ぶ顔に弱い。なんとなくこの顔を見ると、引き受けて良かったと思ってしまうのだ。篠ノ女は先程とはまた違うため息を吐く。なんでこんなに弱いんだ。別にいいけれど。



すこしきれいにきえていく
お題>舌
/じゅんじゅんおめでとう!
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