なんとも珍しいことに赤司のほうからおでんを食べないかと言い出してきた。思わず紫原は目を目一杯見開き、そして食べていたまいう棒を床に落とした。部室には二人しかいないため、赤司はやれやれとため息を吐いてみせながら拾い、紫原に差し出す。紫原は受け取らない。しょうがないので赤司は紫原の鞄へそれを押し込み、そして紫原の顔を見た。
「で、どうする?」

 暖房のよく効いたコンビニから出ると、より一層外が寒く感じる。寒いのは好きではない紫原は身体をガタガタと震わせた。だが、赤司が公園で食べようと提案したため、文句は言わない。なんだか、文句を言ってしまったらこんなにも珍しい赤司をもう見ることが無いような気がしたから、尚更。
 誰もいないベンチに並んで座る。赤司が寒いなと呟くが、紫原から見れば寒くなさそうだ。赤司はいつだって季節を感じさせない。紫原はそれが羨ましくあり、可哀想だと思った。だから赤司の言葉に頷きながら、早く食べようよと急かした。
 箸を割り、容器の蓋を開ける。北風が吹くなか、湯気が顔にかかり一瞬だけあたたかくなる。紫原は耐えきれずに食べだし、赤司は手を合わせてから食べ始めた。具は二人とも、コンビニに置いてあったものを全部入れたので隣に箸を伸ばすことはない。
 熱々の具を胃に収めていき、身体の中があたたかくなっていく。赤司もそうなっているだろうかと紫原は思い、美味しい? と訊ねてみた。赤司は大根を食べながら、あぁ、と頷いた。良かった、と素直に喜ぶ。
「紫原、美味しいか」
「うん、おいしーよ」
 風は止まず、相変わらず寒さは続く。だが、身体ではないどこかがあたたかくなった、そんな気がした。



あたためあう
/木綿さん宅の日記から。ありがとうございますすみません
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