「好きなんだ」
 篠ノ女は自分からの報告のような告白に、勘弁してくれと切に思った。まだ、朽葉ならば良かった。性別や年や種族を気にしないのならば梵天や露草や平八や黒鳶など、たくさんいる。それらの誰かなら、篠ノ女はとても癪に触るが、まだ範囲内だ。好きにすればいい。
 だが、鴇時だけは、駄目だ。鴇時だけは、許さない。鴇時はそういう対象にすべき人間ではない。鴇時は篠ノ女の大切な大切な友達なのだ。そして鴇時にとっても、篠ノ女は大切な大切な友達なのだ。だから鴇時だけは、篠ノ女は心が狭くなる。
 それなのに、紺は鴇時が好きだと言う。鴇時の笑顔に何度救われたかわからないと語るそれは篠ノ女そのものだった。だが篠ノ女は認めなかった。否、むしろ止めてくれと懇願さえした。鴇時は違うと。俺は鴇にそんな感情を抱かないのだと。
 しかし紺はそんな篠ノ女の懇願さえも聞き付けない。むしろ、篠ノ女を嘲笑っている。よくニヒルな笑みだと鴇時に言われる笑みだと篠ノ女は思った。紺は、篠ノ女のまったく同じ顔のまま、鴇時が好きだと高らかに叫んだ。



頭蓋骨のレントゲン図
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テーマ「人外ファンタジー」
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