何か欲しいものはあるか。素っ気なくはあったが、どこか優しさがある声で緑間は訊ねた。どうやら相当に無理をしているらしいことを高尾はすぐに見抜き、思わず笑ってしまった。面白かったのもあるが、緑間なりに自分を大切にしていてくれているようで。

 緑間がシュートを決め、それは終わった。高尾は最後のスリーポイントを眺めながら、笑っていた。汗が目に染みる。だが、悲しみはなかった。代わりに、声をあらげてさらに笑ってしまう。そんな高尾を、緑間は怪訝そうに見た。なんといったって、高尾は緑間に負けたのだから。
 高尾が緑間に望んだことは、緑間との1on1と帰り道で肉まんを奢ってほしい、その2つだった。緑間はそんなことでいいのかと首を傾げたが、高尾はそれでいいの! と言った。高尾自身がそう言うならば、仕方がない。

 1on1を終え、帰り道の途中にあるコンビニで緑間は肉まんを2つ買った。1つを高尾に渡せば、ゴチになりまーすと快活に返された。2人で肉まんを食べる。
「うまいなぁ」
 紺色の空の下、白い息と湯気の中で高尾が笑う。たかだか120円ほどの肉まんを買った程度でここまで喜ぶかは理解は出来なかったが、高尾の望みは叶えられたようなので良しとする。
「高尾、なぜ俺と1on1をしたかったのだよ」
 口のなかが肉で温かくなる。いつもはあんまんを食べるから肉の味が新鮮に感じる。高尾は、すでに平らげていた。悩ましげな声がする。
「ううん、理由……なんだろ、なんか、なんか1回は、真ちゃんとちゃんとバスケしたかったからかなぁ」
「バスケを」
「おう。んで、今日やって、改めて真ちゃんはつえーなって思った。で、真ちゃんと同じチームで良かったって思った」
 なぜ恥ずかしげもなく言えるのだろう。緑間はそうか、としか言えなくなる。頬が熱い。きっと寒いなかで肉まんを食べるからだ。高尾は緑間が肉まんを食べ終わるのを待っている。そんな高尾を見ながら、肉まんを食べ終わったらおめでとうくらいは言おうと思った。



きんきらぴかぴか
/高尾おめでとう!
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