キセキの世代は人間ではない。それが帝光中学校バスケットボール部の、キセキの世代の後輩にあたる人間の言い分だった。だから、彼らにはこちらがわの気持ちなど理解できないだろうと武勇伝の材料に使った。そしてそれは許された。なぜならば後輩は人間だったから。
 後輩が帝光中学校バスケットボール部に入部したては、まだバスケットボールが上手な先輩だった。しかし、キセキの世代の才能が開花し出し、誰もが彼らを人間ではないと言い出したとき、後輩は喜びで胸が溢れた。何故ならば、キセキの世代という人間ではない存在は、後輩にとっては誇り高き先輩そのものだったのだ。
 帝光中学校の唯一絶対の理念である、勝つことを具現化したような、百戦百勝が服を着たような、そんな超越し過ぎた存在は、ただただ眩しく、そしてとても美しい。揺るぎない。崩れることなどない。憧れることさえおこがましい。そのプレイを、網膜に焼き付けられることが帝光中学校バスケットボール部に入部できた幸せなのだ。
 だから後輩はキセキの世代が自分たちを理解してしまったらと恐怖した。自分たちのような、ただの人間ごときの気持ちを理解されてしまい、ただの人間ごときの自分たちがキセキの世代の気持ちを理解してしまったら、どうしようと。しかしまぁ、そんなことはなかったが。
 ただ、幻の六人目は、悲しい目をしてキセキの世代を誇りに思う後輩を見たが、所詮彼もキセキの世代である。影である。人間でいられることが嬉しい後輩の気持ちなど、理解できるはずもない。



後輩の貴石
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