付き合っているのに、と思いこそするが、所詮はそれだけだった。なんせ人吉相手である。どれだけの人間から好かれていることか。阿久根もたくさんの人間から好かれてはいるが、重さが違う。だから、文句はなかった。
 一緒にご飯を食べよう、と言えば、不知火と食べるんで、と言われる。放課後にどこか行こうか、と言えば、バーミーと遊ぶんで、と言われる。休みに映画を見よう、と言えば、宗像先輩と動物園に行くんで、と言われる。ちなみに朝には人吉の母である瞳が一緒だ。二人きりになれない。
 それでも阿久根に文句はなかった。だって、それでも人吉と付き合っているのは自分であることには変わりは無いし、人吉もきちんと謝ってくれる。それに、誰かしらの約束さえなければ、阿久根と過ごしてくれる。人吉はいつだって、最初に約束した人間を優先するのだ。そんな彼が、阿久根は好きだ。
 今日は阿久根と映画を見る約束だった。一週間前から取り付けた約束だ。さすがに予定は空いていたらしく、久々ですねと人吉が笑ったので阿久根も頷きながら笑った。それと同時に、本当に人吉は真の人気者だと認識する。
 文句は無い。が、面白いかどうかは不明だ。それを嫉妬と呼ぶのさえもおこがましい。それでも阿久根に文句は無い。だって人吉は、恋人だろうが友達だろうが先輩だろうがなんだろうが、最初に約束さえすれば優先してくれる。

 ただ、めだかからの用事ならば、人吉はいとも簡単に、相手が誰だろうが、最初に約束してきた人間を切り捨てる。実に、誠実。



限定アイドル
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -