高尾にとって緑間は神様のような存在だった。出会いこそは敵ではあったが、同じチームに入り緑間への態度や意識がガラリと変わったのだ。特に、あの緑間にしか成せないシュートを見るたび、高尾の心は洗われていくような気がした。美しい曲線。同じ時間を過ごしているのかと疑いたくなる滞空時間。高尾はそれらが緑間の手から作り出され、放たれて、勝利へと導かれているのかと思うと眩しくなる。鷹の目でさえも、直視できないのだ。
「真ちゃんはさ、俺にとって神様みたいな存在なんだよ」
 満面の笑みでありながら、どこか切なそうに高尾は高らかに緑間に言い放つ。緑間は眉を寄せ、そんな高尾を見下ろす。まるで何かの宗教の信者と教祖のような空気が流れ、居心地が悪い。
 今まで、化け物と言われたことは数えるのも面倒なほどだった。それに、自分でさえも自身を化け物だと思うこともある。だから、別に人外扱いされることには慣れていた。しかし、神様と言われたのは流石に初めてだった。そして、こんなにも不愉快になるとは思ってもいなかった。
 緑間の手が、高尾の頭を容赦なく叩く。ちゃんと気をつけて利き手ではないほうにした。それに、こんなことで折れたりするような柔な骨ではない。しかし高尾は真ちゃんの手が、と泣き出しそうに呟く。痛いとさえも言わない。腹が立つ。
「お前は、俺をなんだと思っている」
 怒りを露にし、高尾を睨む。高尾はびくりと肩を震わせたが、緑間が何に怒っているかまでは理解できていないらしい。
「お前の相棒は、神なのか?」
 高尾が泣き出す。緑間の言わんとしていることを理解できた上での涙かはわからない。だから緑間はもう一度高尾の頭を叩き、自分の存在を叩き付けた。これならば、まだ化け物と言われている方がマシだ。吐きつけるように、心中で呟く。高尾には聞こえない。



膜が邪魔をする
お題>容赦
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