触ってもいいか、と新開が俯いたまま呟いたその言葉があまりにも弱々しかったので、荒北はいつもなら反射的に出てくる罵声を喉で詰まらせた。ぐっ、と唸ったと言ってもいい。新開は顔を隠したまま、もう一度、尚も弱々しく、触ってもいいかと呟く。読んでいる最中の本にしおりを挟みながら、ようやく荒北は言葉を発することが出来た。
「なんで、だヨ」
 滑らかに言えなかったことに苛立つ。きっと無意識に舌打ちをしたころだろう。けれど新開は特に気にした様子も見せず(そもそも顔が見えないのだが)頼む、と懇願してきた。理由が見えてこない。荒北は今度は意識しながら舌打ちをし、どうせくだらない理由なのだろうと予測した。
「どう触りたい?」
 ぴくり、と新開の肩が跳ねる。それからおそるおそるというふうに荒北の手を掴んだ。
「しばらく、手を握っていたいんだが」
「だがって、もうしてんだろ」
 呆れてため息を吐くと、うん、と新開は小さく頷いた。相変わらず顔は見えない。だが荒北はなんとなくあと1時間もすれば大丈夫だろうと、空いた片手で小説のページを捲った。



/メンタル弱い新開となぁなぁにする荒北
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