足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない足りない。僕の頭の中は『足りない』という言葉がゲシュタルト崩壊しかかっていた。けれど本当に足りないのだ。僕は。
 一緒のベッドに入っている、僕の横で当たり前のように安眠している彼女の寝顔は安らかなものだった。天才だった頃もこんなものだったような気がするが、あの頃はこうして彼女の寝顔をちゃんと見ていなかった気がするから、新鮮に映る。一緒のベッドで寝てからもう随分経つのに。つるりとする綺麗な頬を撫でる。足りない。足りない足りない足りない足りない足りない足りない。僕は、僕には彼女が、友が足りない。ずっとずっと一緒にいたのに、これからもずっとずっと一緒にいるのに、僕は友が足りない。どういう部分が足りないかはわからないが、ただ漠然と足りないと思っている。哀川さんならこれが何かわかるのだろうか。ああでもきっと、そんなこと自分で気付けと言われそうだ。困った。
 友を抱き締める。起きたらどうしようかと思ったけど、大丈夫なようだ。少し力を入れる。規則正しく行われる呼吸音が愛しい。足りない、足りないんだ、友。戯言ではなく。



/友大好き好きいーちゃん(偽物臭い)
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -