「ねぇ、お母さん」
 萌太が、子供らしかぬやけに綺麗すぎる笑顔で、子供じみた声で視界に映るわたくしを見た。萌太のその声とわたくしを母親と呼ぶ得体の知らぬ不快感に顔を顰めながら「なんでしょう」と応えてやる。こっちに人質があるとはいえ、彼は石凪、死神なのだ。気を付けておくのは、当然だ。
 萌太はわたくしが応えた声に肩を揺らす。まるで嘲るようであったが、この子にはよく似合うとわたくしは思ったのだ。
「今日は、母の日だそうですよ?」
 わたくしはこの子がよくわからない。石凪だということやわたくしが産んだ子ではないからではなく、本当に、わたくしはこの子がわからないのだ。わたくしはじっと萌太を見据え、その綺麗すぎる笑顔の真意を探る。しかし萌太はただ肩を揺らしているだけであり、母の日とはなんなのでしょうねと謳うように吐き捨てた。わたくしは黙殺したまま、目の前の子供への興味を殺した。



母の日記念
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