今日はムギ先輩とデートだそうです。私は単に映画を見に行くだけなのですが、誘ったムギ先輩が「デートなんてはじめて!」と楽しそうに笑っていて、だから私はムギ先輩とデートをします。そして私もデートはムギ先輩とお揃いではじめてなのでした。
「梓ちゃん、いきましょう」
私服のムギ先輩はやはり綺麗です。特徴的な眉毛もムギ先輩なら芸術作品です。なんて、唯先輩みたいなことを思ったり。
映画館に行くまでの道のりに人がたくさんいました。ムギ先輩とはぐれたらどうしようかと思って振り向いたら、ムギ先輩が人波にのまれていました。私はすぐにムギ先輩のところまで走りました。たくさんの人とぶつかりましたが、気になりません。それよりも、ムギ先輩のほうが、私には大事でした。
「ムギ先輩!」
人波にのまれて戸惑うムギ先輩の手を掴み、人波から外れます。ムギ先輩は私に手を引かれたまま、ごめんなさいとすごく悲しそうに言いました。だと言うのに、私はムギ先輩の手を引っ張りながら、いまさらながらにムギ先輩と手を繋いでしまっていることに気付き、すごくドキドキしてしまいました。だから、私もムギ先輩に謝りました。きっとそれはムギ先輩とは意味が違うと思いますが。
いっぱいいっぱいなんですぅ