あたしには兄貴がいる。でもあたしは兄貴と会ったことが数えるくらいにしかなくて、しかも兄貴に会えたのは本当にあたしが小さい頃だったから、時々あたしは、あたしには兄貴なんかいないんじゃないかって思ったりしてしまう。兄貴というのはあたしが作り出した幻覚なんじゃないかって。何回も思った。
 でも、匂宮の人とか分家の人があたしを見た時に、小さく兄貴の名前を零したことがあったから、だからあたしはそれに安心する。あぁ、兄貴はちゃんといるんだっ、て。
 鏡を見るのが好きだった。だってあたしと兄貴は兄妹だから、見た目もそっくりだから。鏡に映る自分を兄貴に見立てて、こっそりと鏡に映る自分に笑いかけたりした。兄貴、と。虚しかったけど、兄貴はあたしと違って忙しいから仕方ないんだ。そう言い聞かせる。
「りーずむちゃあん、今度会っちゃおうっか?」
 初めて兄貴から電話がきた。あたしはうれしくてうれしくて、しかも兄貴から会う約束もしてくれて!だからあたしはすぐに返事して、電話越しで兄貴とたくさん笑った。すごく幸せだった。兄貴、兄貴。
 あぁ、兄貴。あたし、兄貴に会いたかったよ。
 消えかかる意識の中、どこかで理澄とあたしを呼ぶあたしの声がした。



れるるれるろおえ
お題>女顔
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