君のことが好きだよ、式岸軋騎。
 兎吊木は部屋の隅で三角座りをして、情けない鼻声でそんなことを吐き捨てやがった。いつもの雌鳥みたいな声がさらに気持ち悪くなっていて、兎吊木が嫌いうんぬんを抜かしても気持ち悪かった。俺は兎吊木の一メートル先にいた。
「好きなんだよ、式岸軋騎。<<街>>」
 兎吊木がこんな状態でこんなことを言うのは俺だけではない。ついこの間も滋賀井も言われたらしい。だから俺は兎吊木に好きと言われようとも痛くも痒くもなかった。第一、兎吊木が本当に好きなのは暴君であり俺が好きなのも暴君なのである。だから、正直に言えば叩き潰したい。
「好きなんだよ、」
 もし兎吊木が俺に向かって愛しているとでも言ったのならば。そんなことを考えて、身体が震えた。ああ気持ち悪い。



悲鳴をあげる静寂
お題>容赦
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