もてる人だなぁ、とは思ってはいたが、まさかここまでとは思っていなかった。善吉はたまたま自分の範囲に置いてあった、目安箱に入ってあった、阿久根宛ての、いわゆるラブレターというものを見てしまった。しかも最悪なことに今しがた、自分以外の生徒会メンバーは仕事へと出てしまっている。
 善吉は酷く居心地の悪い空間に取り残されてしまったことに、身体をそわそわと揺らす。しかしいくら善吉が身体をそわそわと揺らしても、この空間が酷く居心地が悪いと思っても、善吉の手にあるラブレターは消えてはくれない。善吉は、はぁああと深い深いため息を吐く。
 ラブレターの内容は、至って普通の内容だった。阿久根先輩が好きです。ただそれだけが、可愛らしい文字で可愛らしい紙に匿名で書かれている。善吉はラブレターなんて目安箱に入れるなよとやり場のない怒りをため息に変えた。
 しかしこれを見つけたのがめだかちゃんとか喜界島じゃなくて、よかった。だってあいつらがこれを見たらなんて反応するか。善吉は想像しただけでその光景に疲れ、またため息を吐く。何よりもため息の原因は、このラブレターを阿久根が見つけなかったことだ。なぜ関係のかの字もないような俺が。率直に善吉の気持ちを言えば、これでいっぱいだ。
 だいたい、あの人めだかちゃんが好きだって公言してんじゃなかったのかよ。善吉の怒りは匿名と阿久根へと、確実に向かっていた。否、匿名は匿名なのでどうにも出来ない分、怒りの8割方は阿久根へと向かっていた。善吉は阿久根が帰ってきたらこのラブレターをどうしてやろうか。ただそれだけを考えていた。まだ善吉の怒りは治まらない。



殴らせろ
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