それまで意識したことはあまりなかった。ただ当たり前すぎてしまい、改めて指摘されて、あぁそういえば。と変に納得するような。そんなことだった。だからかわからないが、善吉はそれからあまり阿久根のことをちゃんと見れずにいた。
「なんか最近さ、人吉くん阿久根さんのこと避けてない?」
 生徒会室、ちょうどめだかと阿久根が仕事のために生徒会室から出た直後、喜界島は善吉と2人きりなはずなのになぜか内緒話をするかのように、小さく耳打ちをした。善吉はそんな喜界島に、気付かれていたのかと内心舌を打ち、「そうか?」ととぼけてみせた。喜界島はレンズを光らせ、「嘘は良くないよ」ジリジリ善吉を追い詰めるように言った。これにはさすがに善吉は分が悪く、頭を掻いた。
「いや、そのな、別にあれだぞ?阿久根先輩が嫌いとかじゃねぇからな?」
「じゃあ、なんで?」
「……言わなきゃダメか?」
「うん」
 即答され、善吉は唸る。絶対に笑われる。しかし善吉は喜界島の、仲間の、期待にも似た眼差しには、弱い。善吉は「誰にも言うなよ」とだけ前置きする。
「あのな、この前よぉ、クラスの女子が阿久根先輩ってカッコいいよなって話してたんだよ」
「うん」
「で、あぁそういえば阿久根先輩ってカッコいい人だよなぁって思って……」
「うん……え?それだけ?」
「……悪い、何も言わないでくれ、俺も恥ずかしい」
 喜界島は自分は今なんとも間抜けな顔をしているのだろうな、と思った。だってそんな、たったそれだけのことで!?
「だから言いたくなかったのに……」



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