なかなか好みの女子を振るというのは不快だ。蓮実はたまの告白を受け、そしてそれを断るたびに安直にこんなキャラクターを作るべきではなかったと苦虫を噛み潰したような後悔に襲われる。だが、今の自分には女子との交流はなるべく避けるべきだという考えが間違っているとも思わないので、結局蓮実は気にしない。
 むしろ、ある特定の女子との交流に集中したい気持ちが大きかったりする。
「聖司くんて、女の子苦手なん?」
 その特定の女子である石田憂実は蓮実に漢字の読みを教えてもらっている最中に、ふと思い出したように訊ねた。蓮実は勉強に集中しろよと思ったが、今日教える部分がそろそろ終わろうとしていたことに気付き、会話に乗ることにした。
「いや、苦手じゃない。普通に、好きだ」
「そうなん?なら、なんで振るん?」
「今は必要ないから」
 まるでハンカチはいらないと言ったように聞こえてしまったのか、みるみるうちに憂実の顔が曇る。大方、蓮実が振った女子でも慰めたりしたのだろう。面倒だ、とは思わなかった。むしろ、蓮実は憂実の悲しみを学ぼうとしていた。
「そんな言い方、したらあかんよ」
 別にサディストでもない蓮実には憂実の悲しんでいる顔は悲しんでいる顔でしかない。あくまでも蓮実は、憂実からより感情を学ばなければならない。
 きっとこんなことが知れれば、憂実は今以上に悲しんでいた顔をするのだろうが。



学びませう
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