07 破壊していく音が聞こえた。(7)
「ヤダ!!!!!じじぃとなんてェ!!!」
「何を言っておる、馬鹿者が!」
「オレもナマエと一緒に帰るぅぅぅううう!」
ファインダーが通信機器を無くしたため、駅の電話でコムイに任務完了の連絡を入れた。
途中経過の連絡が一切途切れていたからものすごく心配した、と受話器越しに聞こえる安堵の聲。
結果はイノセンスを無事回収できたけれど、待っている側はヒヤヒヤなんだからねと、兄の顔をしているであろうコムイを想像すれば、笑いが漏れそうになった。
いつもはリナリーリナリーと、ストーカーの様に妹を愛し、周りを困らせている彼も。
時たまにアタシ達にも兄の様に振る舞う。
室長と言う責任とプレッシャーに押し潰されそうな肩書きを持ちながら、アタシ達が安全な様にと、計らってくれる。
そんなコムイに後で正式な報告書は提出するのだが、軽く経緯を話した。
その結果がコレだ。
追って合流したブックマンにも事を報告しながら、受けた手当て。
彼の診断(判断?)によって、全身に傷をおったアタシは教団へと帰還を言い渡され、そしてラビは新しい任務を与えられた。
ブックマンと共に。
『安心して、ラビ。イノセンスはアタシがちゃんと持ち帰るから!』
「オレも帰りたいさ!」
『アタシが代わりに帰ってあげるからね!』
ヤダヤダと、駄々をこねるように項垂れるラビ。
そんな彼に勢いよく拳を握り、肩を軽く叩く。
「ずりぃさ、ナマエ!」
『あ、汽車来た!』
「おいいいぃぃ!」
足元に置いていたトランクを手に取って、彼に軽く手を振って見せた。
“なんだよ、それ”と膨れたように突っ込みを入れつつも、ふ、と表情を崩す。
『…ラビ。いってらっしゃい。』
そしてコツンと、拳を合わした。
「おう…。」
一息、はぁ…と深いため息をついた彼が、アタシの髪を撫で、またな、と笑う。
少し諦めを含んだ、それでいて明るい笑い。
ごめんね。
そう悪戯に笑いながら、白い煙を吐き出しながらホームに入ってきた黒塗りの汽車に乗り込む。
町外れの駅だから乗り込む人は少ないし、車両も短い。
きっと何処かの駅で、増結するのだろう。
ファインダーが教団の名前を使って用意した、特別室の窓際に腰を下ろす。
立て付けの悪い窓枠を持ち上げれば、ギシギシと音をたてた。
『また、ホームでね。』
あれから暫くして小さな小さな立方体へと変化した、イノセンス。
科学班から預かったガラスケースに入れて、トランクに詰めた。
これがアタシの次の任務。
イノセンスを無事持ち帰ることだ。
「気を付けてな。」
『ブックマン達もね!』
ゆっくりと走り出す汽車の窓からラビに手を振った。
ポケットに片手を突っ込んだラビと、その横にちょこんと並ぶブックマンが返してくれる。
いってらっしゃいと、いってきます。
次に逢える時を既に思い浮かべ、帰路についた。
破壊していく音が聞こえた END
20130304
To be continued
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