▼48回の別れと49回の出合い







確かあれは34番目のオレだった気がする。














記録しては次へ、記録しては次へを繰り返してたから輪に混ざるのはお手の物。

ヘラヘラして笑顔作っておけば、近寄ってくる歴史のインク達。

そういう目で見てるから、去る時もたいして何も思わなかった。

別れなんていつも一緒。
気付かれないよう、いつの間にか消えるんだ。











ただ、一度だけ。
一度だけ違ったんさ。



とある山奥の村に記録のため7ヵ月程滞在していたことがある。
勿論そこでも上手く馴染んで、数人の仲の良い人間を作り、情報を得ていた。



上手く笑えていた筈だ。
何で気付いたのかわからねェ。

じじぃがそろそろだな、と言っていた直後だった。
聞かれていたとしても解らないように異国の言葉で話してたし、態度に出したつもりもない。

今まで上手くやって来たんだ、ヘマするはずねェさ。







でも彼女は寂しそうに小さな声で34番目のオレの名前を読んで、告げたんだ。

ーーサヨナラと。












その時の声や涙は忘れらんないさ。
思えばあれは恋だったんだろう。
いとおしいと思った。

ブックマンであることを恨んだ。
もう彼女に会えないことを。





今は綺麗な思い出になってっけど、と遠い過去を懐かしんだ。
談話室の窓辺に目をやり、珈琲を啜る。


初恋、だったんさ…







あの後もいくつもの記録地を巡り、49番目のオレとして今や黒の教団のエクソシストになった自分。

初恋は?と言うリナリー達の会話が聞こえてきたから、幼い頃の綺麗な思い出を引っ張り出していただけだった。

ちょっと思い出に酔っていただけ。














「…何でここにいるんさ、●●」


だけなのに。




天気良いねーとか、今日の夕食はオムライスかなーとか言いながら、一緒のソファーに座ってきたその人物に目を向ける。

あれから数年が経ち、幼い少女から綺麗に成長した●●が何故か自分の横にいて。




『適合しちゃった!』


えへへ、と満面の笑みを向けた●●は、エクソシストの証拠であるソレに身を包んでいる。






「生足だよ!生足!萌えない?」


丈の短いスカートをひらつかせながら、とんでもない事を聞いてくる。

え、こんな性格だったけ…?
少し天然なとこもあったけど。。。

えへへじゃねぇさ、オレの綺麗な思い出を返せよ、と冷や汗とため息が出た。









そんなオレを気にすることなく話を続ける。


『アタシのイノセンスはねぇ、』


聞いて聞いて、とオレの服をきゅっと握っている姿は昔と変わらない。

昔の事を聞いてくるでもなく、屈託のない笑顔を向けられる。
ソレがこんなにも嬉しいなんて。






また、会えた。

いつかこの戦争が終わり、次の記録地へ行くときはまた別れる事になる。

しかし今は、また会えたこの喜びを感謝しよう。


「●●、ラビって言うんさ」


手を差し出しながら彼女に名乗る。







「また、仲良くしてよ」







込み上げてくる笑みは我慢できない。
嬉しそうに握手してくる彼女に、本当の笑顔を向けた。






end

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□あとがき□

短編を、と思い立って一時間位の安産でした。

面倒見の良いラビが書きたくて!



最後までお付きあい有難うございました!





20110729




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