▼悪魔が私に恋をした 「あれ、●●出掛けたんじゃぁ…」 『リーバー班長、ラビは？』 ラビの所在を聞こうと口にした言葉が思いの外低く、 廊下でスレ違いざまに向けられたリーバー班長の顔色がみるみる青くなる。 「さ、さっき任務へ行くって クロウリーと水路へ歩いていったのを見たが…」 『ちっ…』 あぁ、神田よりも悪意の込められた舌打ちが出てしまった。 人の事言えないなと苛ついた頭で考えているうちに よれよれの白衣に身を包んだリーバーは視界の彼方へ走り去っていて。 ラビの手掛かりを入手した今、 一言何か言わずには居られないこの苛立ち。 彼に逢うため、水路に続く廊下の角を曲がった。 「●●、足が速いですね」 いや、曲がろうとした。 その瞬間眼に飛び込んできた白に背を向けるよう、来た道を戻った、 と言う方が正しい。 一番逢いたくない、一番苦手とする人物。 アレン・ウォーカーだ。 彼は何かと絡んでは毒を吐き、 にもかかわらずストーカーの様に執拗に追いかけ回す。 案外ストーカーと言う表現はあながち間違っていないかもしれない。 出合って早一年。 その一年中好きだの何だの告げてくる。 愛情と言うモノにあまり触れず育ち、 戦いに集中したい私としては些か迷惑な話だ。 一番初めに一応感謝の意を込め有難うと、 しかし今そう言う気持ちにはなれないと断った。 のに。 「何処行くんですか？」 『…任務は貴方じゃなかったの、アレン』 「えぇ、●●が非番って伺ったので ラビに代わって頂きました」 気付けば隣を歩くアレンを一瞥しながらスケジュールを確認すれば やっぱりとしか言い様の無い状況。 早足のアタシにニコニコしながらも、 ぴったりとついてくる。 なんでそこまでラビを気にしているか。 ソレは至極簡単なこと。 教団中で兄のように慕い、仲が良い彼と偶然合った非番。 前から行きたいと言い合っていた 買い物の約束をしていただけの事。 昨日決めた待ち合わせのエントランスに向かえば 出迎えられる白に苛立ちと今日の予定がなくなった切なさ。 ソレでラビに説明を求めるべくその白を撒いて、教団中彼を探したのだ。 「…そんなに嫌ですか。」 『え…』 急に聞こえた辛そうな声に振り向けば、数歩後ろで立ち止まるアレン。 細い肩が少し震えているような気がする。 泣いている！？そう思い彼に身体を向けた。 その瞬間。 「嫌って言っても絶対離れませんけどね。 だって君は僕のモノですから」 気付いた頃にはがっしりと捕まれた腕。 いつの間にか発動しているイノセンス。 白いベルトが身体に巻き付いて嫌でもアレンのあとを追わざるを得ない。 『だ、騙したわね、この似非紳士！黒アレン！もやしぃぃぃ！』 「煩いですよ。ここでその口、塞いでも良いんですけど。」 冷ややかな目でこちらを見、 うっすら笑顔を浮かべているソレはまさしくサタン！悪魔！ 右手の人差し指でアタシの唇をなぞられたら嫌でも意味はわかる。 凍る背筋のせいもあり身の危険を感じて大人しくすれば、 ソレに気を良くしたのかとても嬉しそうだ。 「さて、買い物に行きますか」 『は！？』 「だってその予定だったんでしょう？」 引き摺られた身体が向かうは水路。 しっかりと掴み直す彼に目をやれば、街へ向かう気満々で、 何処行きたいですか何て聞いてくる。 「お腹が空いたので先ずはランチにしましょう。 その後服でも見ますか？ あぁ、この間リナリーに教えて貰った アクセサリーショップに案内しますね！ お揃いとか買っちゃいますか？」 『や、アタシはラビと…』 行く、そう続けたかった。 しかし急に立ち止まり、壁に追いやられ、 何事かと少し背の高いアレンを見上げれば 満面の笑顔。 ただ、とんでもない恐怖を覚えるのは目が笑ってないから。 そして彼が作り出す空気がものすごーく重いから。 『あ、アレンさん…？』 「ラビ、ラビ、ラビと、ホントに煩いですね。 二度と言えなくしてやる」 『っ、ぎゃーーーー！！！』 アレンの背後に真っ黒なモノが見えた！ しかも口調オカシイ！ え、紳士キャラは何処へ！？ 「貴方が僕を好きになるまで逃がしません」 そう耳元で囁かれた殺し文句は、今までに聞いたこともない位、 低く甘く恐ろしい声だった。 end . □あとがき□ アレンは16歳って考えない方が上手く動く気がします！ そして黒アレン！ 黒ければ黒いだけイイ！ お付き合い有難うございました。 20110828 に書いてて20111016にupするという。 . ←一覧へ |