▼愛ゆえの依存
















「おーおー、荒れてるねェ」




『…ハ、ァ、…ハ、ッ、』









割れた窓ガラス。


ソレに向かって降り下ろしたんだろう、
片足が折れて無惨な背凭れ付きの木造チェア。

先日来た時は綺麗に並べてあった本達は
雪崩のように本棚の下に固まっている。

ベッドのシーツは剥がされて床の上に破り捨てられてるし、
枕からは白い中身が顔を出している。








「血ィ、出てるさ?」


『ら、び…ぃ…』







握りしめてる椅子を離させて、
腕の中に引き込めば大人しく収まる●●。
白い小さな掌は切り傷のせいで赤く染まっていた。

大きな水滴が長い睫毛を濡らしながら零れた自分のソレ。
背中を優しく撫で、綺麗なロングの髪を少し梳けば、
首筋に感じる安堵の小さな息。












「で、今回は何?」

『……夏バテ』

『しんどいんさ?』






吐かれる理由はたいして重大じゃない。

壁づたいに床に胡座をかいて座り込み、
腕の中の●●に問いかければ
背中の服をキュッと捕まれた。



小さく上下する頭に顎を少し乗せ、
更にきつく抱き寄せる。








「此処、暫く寝れねェよ?」

『…寝なくて良、』

「暫くジジィ、居ねェんさ。」





うち来る?ってちょっと笑顔を浮かべて
顔を覗き込んでやれば見えるピンク色の、唇。

啄むように触れるだけの合わせたソレ。

イライラしてるような尖った空気が少しだけ和らいだ気がする。









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よくある事、だ。
●●が当たり散らし、ソレを受け止める。
物にでも人にでも、怒りや苛立ちを向ける彼女。

少し前に誰だったか、よく付き合えるなと言われたことがある。

大方彼女の対象になった内の一人だろう。








幾らでも付き合える。
だってこれは全てオレに甘えてるんだ。

理由はたいして、重大じゃない。

その後に呟かれる言葉が一番重要なのだ。







『ラビ、嫌わ、ないで…』






嫌うわけがない。
もっともっとオレに甘えて依存して。
他の誰も何も見えなくなれば良い。


そう思う自分が●●に依存してる。









これはそんな愛しい人の気持ちが一番感じれる、時なんだ。
一番愛されている時間なんだ。




なんて滑稽で美しい時間。




end
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□あとがき□



ちょっと?かなり偏った愛情。
実は依存関係が一番しっくり来るんです。

好きってきっとこんなドロドロした固まりの方が
本当の姿なんじゃないかなとか暑さで沸いた頭で思ってみたり。



よくわからないあとがきになってしまった^_^;



20110816


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