▼テーブルマナーは不要です。













『…』


「何?お前も食う?」


『や、結構です。』
















隣で鯉に食らいつくはティキ・ミック。





同じノアの一人。









端正な顔立ちをしているくせに、
先程から池に居る鯉を捕まえては齧り付いていた。



正直、グロい。

普通、レディに鯉(生きてる)を差し出すか!?
神経疑うんですけど。









そんなアタシに一切のお構いもなしに三匹ほど平らげた彼は、
満足、なんてふざけた事を言っている。
















『鱗、付いてる』

「え、マジで?」

『マジで』



ハンカチをティキに渡し、左頬を指した。

取ってよ、●●、と言う戯れ言は無視して立ち上がり、
スカートの裾をポンポンと払い除ける。
池の近くに有った石に座っていたからお尻が痛い。


このあり得ない食時に一時間も付き合ってしまった。
























『ティキと組むのヤだ。』

「何でそんなこと言うんだよ、」





後ろからついてくる彼に拒絶の色を見せると、
不意に捕まれた腕。

振り返ればシルクハットを被ったイケメン。





軽く引き寄せられ、腕の中に納められる。
トクトクと彼の心音が聞こえる位。
背の高いティキを見上げれば、
ニィっと弧を描く薄い唇。












「好きなくせに、オレが。」










降り注ぐ艶を含んだ声。

この声が、好き。

背中に回る腕が、指が、好き。

弧を描く唇が、好き。














距離にしてあと、数センチ。

吐息が頬を掠める。

彼の眼が猛禽類の様に鋭く、
獲物のアタシを狙っていた。
















このまま、身を委ねても構わない。
一瞬そう思った。

思ったのだが。






『鯉食った唇なんてぜぇったい嫌!!!』








顎をグーで殴り付け、
その腕からすり抜けた。












「っ!●●!食ってなかったら良いのかよ」

『その時の気分ね』







気が向いたら相手してあげる。
ロードの作った扉入りながら、そう吐き捨てた。










森の中、置いてきぼりを食らったティキだが、
その眼は些か楽しそうだ。






「絶対、手に入れてやるよ」






そう言い放ったティキの声は既に
●●には聞こえなかった。












End

(歯ぁ磨いたんだけど、良い?)
(気が乗らないからパスね)
(…まじか)










end





□あとがき□


所詮ホームレス、って感じでラフに生きるティキが好きです。

そしてちょっと扱いが悪い感じもw



最後までお付き合いありがとうございました。

20110813



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