▼依存にも似た想い2









「神田!●●!」










団員が多く戦死し大聖堂を埋め尽くした惨劇の日から数日が経ち、
傷だらけだったリナリーの包帯も外れたある日だった。








食堂でユウと少し遅めのランチを摂っていたところに
パタパタと駆け寄ってきたリナリー。
数日前まで少し精神が不安定だったので心配していたのだが、
落ち着いた様でまた明るい笑顔を向けてくれた。











「紹介したい人がいるの!」


「ラビ、って言うさ。宜しく!」











同じエクソシストの新しい仲間なの!
そう言う彼女の後ろからやって来た赤髪が目に入る。
黒いバンダナを付け、眼帯をした彼は
ヘラっとした笑顔を見せて片手を差し出した。








『●●です。宜しくね、ラビ!』









大きな手と握手をした後、
彼は隣にいるユウへ視線を向ける。











「そっちの彼も宜しくさ!」

「宜しくする気はねェ。」

『ユウ!!!』

「神田!!!」









差し出した手を一瞥し、
一刀両断に切り捨てた。
所在なく出されているソレが痛々しい程。



コラ!とリナリーと二人で叱るも、
反らせた視線は戻る気配がない。




「ハハ、厳しいねェ。ユウ」

「ファーストネームで呼ぶんじゃねェ」






いつの間にか抜かれた愛刀が、
本日初対面の彼の喉元に当てられていて
今にも切り刻んでやると言わんばかりの殺気を放つユウ。





ヘラっと笑顔を見せていた顔が今では引き攣っている。
ラビから離し、ユウの前に身体を滑り込ませた。
同様にラビの一歩前へ出てきたリナリー。

お互い苦笑いしか出なかった。












「ラ、ラビは次期ブックマンなんだよ!知ってる?ブックマンって!」







少しワザとらしかったがリナリーが話題を変えたのでソレに乗る。
エクソシストとの両立、頑張ってね!なんて二人で応援してみたが、
ユウは関係ないと言うかのように
食べていた蕎麦のトレーをカウンターへ返しに行っていた。








「●●はエクソシストさ?団服着ていないけど…」








タンクトップにショートパンツ姿。
肩を冷やさないように掛けているロングカーディガンの下から覗く
両手脚に巻かれる包帯が気になったのであろう。









『あ、アタシは…』

「●●、行くぞ。」

『っえ、ちょっ!?』









ラビと話をしている最中に腕を捕まれ、食堂から連れ出された。





「●●もエクソシストだよ、ちょっと任務にはついてないだけなの」

「サポート系かなんか?」

「…そのうち解るわ」









少し寂しそうに二人を眼で追うリナリーを横目に
出ていった二人を思い浮かべ、
ま、何とかなるでしょ。と結論付けた。











































『っ、痛!』

「……悪ぃ」







捕まれていた腕が解放され、
少し解けかけた包帯を巻き直すユウ。

さっきまで尖っていた気配が和らぎ、
こちらを伺う眼と、優しく撫でる手に変わる。









『気にしてないよ、アタシ』


「…」










彼の手を取ってゆっくりと、でもしっかりと見据えて言葉を紡ぐ。




『大丈夫だよ。ユウが居てくれる。』




ソレだけで本当は何も要らないんだ。
ソレだけで強くなろうと思える。
身体中の傷なんてちっぽけなモノだ。



「ハ、貪欲だな」

『あら、強欲よ。』






教団一の美形エクソシストを独り占めしているんですもの。
怪我をすれば手当てに、
落ち込んで逃げ出せば迎えに。



いつも貴方は側に。







ソレが救いなのだ。




「わかってねェな」


『何が?』


「…、いや何でもねェ。」




口に手を当て、背を向けてしまったユウの後を追って、
ゆっくりと歩き出す。








自分より大きな背中が何よりも愛おしかった。














End
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□あとがき□


神田と依存関係の様な恋愛関係の様な、
お互いがお互いを求めてる感じにしたかったのですが。。。
難しかった…



最後までお付き合い、ありがとうございました。



20110812


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