▼落葉の絨毯のラプソディー










黄から緋へのグラデーション。

はらはらと舞い落ちる木の葉がまるで花弁の様で。

敷き詰められた色取り取りの絨毯の上を歩く度、
乾いた音がリズムを刻む。




『あ、砂月だ』




近付いてきたその音に横たえた身体を起こし、
茜色の天幕を仰げば視界に写る金緑の瞳。




いつもはきちんと結ばれているネクタイが乱雑にズボンのポケットに詰め込まれ、
二、三個外されたシャツの釦と
外された眼鏡。





「●●」





いつもより鋭い眼と、
いつもよりワントーン低い聲が降り注ぐ。


隣に腰を下ろした砂月の手が髪に触れ、
アタシの漆黒を彩っていた落ち葉を払い除けた。






「曲が出来た。歌ってくれ」






アタシの髪を梳く砂月の手は好きだ。

那月と同じ手なのに、どこか違う。

同じ顔で、同じ身体で、同じ聲なのに。

全然違う。







『アタシが歌って良いの?』






差し出された五線譜を受け取った。

砂月の音符が走った五線譜。



こう言う事は少なくない。



これで何度目かの歌。
これで何個目かの宝物。





「●●の為に書いた。」





弧を描く唇に吐き出される自分の名前は心地良い音程。
擽る様に降り注ぐ聲。






『Lalala〜』






歌詞は付けられていない。
音符を追って、メロディをなぞる。




その間にチューニングを終わらせたヴィオラを砂月が構え、前奏を奏で始める。




ハラハラと舞い落ちる茜の下、
砂月の指が跳ねて弦を弓が撫でる。



ヴィオラの少し低い音に合わせて聲を震わせた。




誰も知らない二人だけの歌。
貴方に捧げる恋の詩。





この聲が枯れるまで
砂月の歌を歌うよ。

砂月のために。


ずっと。







『砂月、好き』






そう言えば切れ長の金緑石は嬉しそうに笑うのだ。




(貴方に捧げるラプソディー)

end


20111102



終わり!と言う終わり方ではなくて、
日常のヒトコマと言うような
特別ではない日の特別な事と言うか。

そんな感じに書けていれば良いなと思います。
上手く言えませんが。

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