▼最後のdizzy












人気の無い第二図書室。

第一図書室の方がメインと言う事もあって、
此処を利用する人間は限られている。




酷く静かな空間に、
古い紙の香りだけが漂った。









最後のdizzy










『っ、は、』



響くは甘い吐息と酷く切ない聲。

目の前でアタシの思考を奪う四ノ宮砂月。




涙が溢れるのは、
決して酸素が足りないだけじゃない。

触れているのに今にも消えてしまいそうな儚い彼への恋心。







夢中になって交わす口付け。

強く絡めた指と頬に触れる彼の掌。

握り締めた制服越しに広がる本の海。



息をするのも忘れて
深く深く溺れる。






「…●●」






夢中にさせる低い聲は
口付けに心酔させる罠。

貴方の手の中で恋を知った。






囚われたら最後。

羽化した翅はもぎ取ってはくれないくせに

その手の中でしか生きられない。


そして後戻りは出来ないと言う位、
溺れさせて、夢中にさせる。




「…さ、つき、…砂月、」




譫言のように囁けば
強く瞬く金翠石の瞳が細められ、
愛おしげに小さく笑う。





『●●、』





薄い唇がまるで雨の様に降り注ぎ、
蜜の様に甘い聲が耳を愛撫して、
柔らかな金色の髪とヴィオリストの指が肌をなぞる。






くらくらと眩暈。


何処までも堕ちていける、
そんな気がした。







本棚の向こうに見える青に
彼方へ飛び立つ季節外れの蝶。

無意識に伸びた手が空を切る。











ねぇ、神様。

どうかこのまま。

時間を止めて。

願わくは、この刹那の幸せが続く様に。











『すき、』



紡ぐ言葉が、痛い。

吐き出した言の葉は端から脆く崩れていく様で。





砂月の影を抱き締めて
零れる涙に想いを籠めた。




壊れていく音がする。

貴方が居たと言う証さえ残さずに。



想いを天秤に掛けた。

全ては那月の為に。






「…これで、お別れだ」





醒めない夢に沈んだまま。



背中に感じるタイルの冷たさが、真実。




サヨナラの鐘が鳴る。




(ずっと愛してた)


end

20111019



ちょっと悲恋。
砂月ってそう言う立ち位置だと思っている。

英訳とかではありません、英語苦手。
よく解んない仕上がりになってしまった…

辿り着いた二つの最後の一個。
イメージを壊してしまっていたらスミマセン。

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