お久しぶりです。私のこと、覚えていますか?


 こちらはだんだんと桜が咲きはじめました。心地好い日々です。あたたかい日差しに、ふわふわした未来。
 カレシとかいう甘い存在は未だにいませんが、そういう色恋ばかりが幸せではないと思うのです。そんな浮ついたピンクより、私はやさしい桜の色のほうが素敵だなぁと思います。
 別にカレシがいらないってわけじゃあないのですけど。
 桜のほかにも、たんぽぽやらシロツメグサやら、貴方が好きだった草花も少しずつ、顔を見せています。
 まだまだ肌寒い日もありますが、春の兆しと柔らかさのおかげでなんとかやれています。寒いのは、まだ苦手です。

 無事に、私の受験も終了しました。
 もちろん合格です。貴方が通った高校に、今年から私も通学するんですよ。
 まぁ、実は不合格になるなんてことは、これっぽっちも考えてはいなかったのですけど。
 貴方が受かった学校に、私が受からないわけないですから。なんて、冗談です。


 おおきくて、いじわるで、でもやさしくて、そしてかっこよかったあの憧れのお兄ちゃんと同い年になったなんていうのは、まだちょっと信じられません。
 あれから何年、経ったのでしょうか。時間の流れというものは、よく掴めません。

 小さかった私も、今はみんなのお姉ちゃんになりました。チビだチビだと貴方にいじめられていたのも、そんなに遠い記憶ではないはずなのに。
 いつの間にか、消えて、なくなって、届かなくなっていました。
 迷子になった気分です。
 時間のなかに、置いてけぼり。貴方のせいです、と言えば笑いますか? 笑ってください。


 そちらはどうですか? 快適ですか? もう寒い思いはしていませんか?
 そちらにも、桜は咲くのでしょうか。
 貴方がそちらでも、幸せに暮らしていることを願います。
 ずっとずっと、好きでした。




そっと、恋をした/ 揺らぎ




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