悪ふざけ◇あらすじ
都会のど真ん中で自殺をはかろうとした俺に
「てめぇ、そこで何をしようと思ってんだ。
自殺なんて目覚めの悪いことしようと思ってんならもっと人気の少ないところに行け。
そのシーンを見てどれだけの人間がやりきれない感情を抱くと思ってやがる。
どうせ死ぬんだろ?
ちょっとくらい頑張って、遠出しろや。
これからも生きていく俺らに気くらい使えや、死人さんよ」
数え切れない程の人間が居ても誰も俺に気づかない中、タバコをふかしながら貴方は俺に気づき、声をかけた。
言われて気づいた。
俺は誰かに気づいてほしかった。
例え、他の人の心を巻き添えにしても。
自分のしようとしたことに罪悪感を感じ、言われた通り人気の少ないところに移動しようしたが、死ぬつもりだったから何も持ってきておらず、ひたすら歩くも、人は居た。
あの人の言うとおりにしてしまったら死ぬものも死ねない。
もう良い。言いなりになってやる義理もない。
ここで良い。
疲れ果てたその時に再びかかった声。
「中々、人いなくなんないねぇ。死ぬのも楽じゃねぇな。なぁ、死にたがり君。
お前に興味ある。
仕事してみねぇ?
生きるだけの仕事。
お前が生きるために必要なことは俺が用意してやる。
……珍しいとは言われんだけど、俺はさ、したいことがありすぎて、死にたいなんてこれっぽっちも思ったことないんだわ。
大体の奴は、何回も何回も思うらしいな?
でも、俺は自分の寿命なんざ全然足りない。
だから教えてよ、死にたがる人の心って奴をさ」
目の前で煙草をふかしながら彼は続けてこう言った。
「俺に、撮らせたいって思って見せろよ。
それまで世話はしてやる」
そうして、二人での生活が始まった。
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