京極堂 | ナノ


 

飴色の瞳も、色素の薄い白い肌も、透けて消えてしまいそうな髪も凡てが彼という人間を作り上げている。
眉目秀麗とは正にこの人の為にあるような言葉だと、ぼんやりとした意識の中で思う。


「榎木津さ、ん……」
「眠くて仕方なさそうだな」


そうだ。私は今非常に眠い。
睡魔が私の意識を深い闇へと誘う。そんな時に榎木津さんはやってきた、だから生憎今の私では榎木津さんの相手など務まらない。

だけど本当は話したいことが山ほどある。なのに、それは叶わない。
この睡魔がそれを許してくれないのだ。


「え、の……さ」
「此処にいるから、安心して眠るといい」


酷く頭に響く声だった。不愉快という意味ではない、心地好くて堪らない。それに加えて榎木津さんの細くて長い指先が私の頬を掠め額へと上がっていく。そして額にかかっている前髪をそっと撫でたのが分かった。

そこで漸く私の意識は途切れた。



揺ら揺ら、沈む



 
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