「う゛っ、」
腹部に鈍痛が走る。私はついに悲鳴も上がらない程に弱って、痛みを訴える手段の一つを失っている。
意識も朦朧と不確かで心地の悪い夢と分別がつかない。しかし私はこれが夢でないことを理解はしていた。
「……ッ、い゛」
「駄目ですよ。気を失うなんて赦しませんからね」
乱暴に髪に指を絡ませ、ぐいと面を上げさせられる。首筋を無理に引っ張られるような形になり、痛みに一層眉を顰めた。しかし彼は穏やかな口調と笑顔で意識を手放すなと私を攻めながら窘めた。
「まっ、……すださ、ッ」
散々身体の至る部分は撲られ、内出血に青痣にと目を瞑りたくなるような状態だった。だが常に顔は撲られることはなく無事で、そこだけには手をあげることはしなかった。
「なんですか、ひふみさん」
酷く甘い声で私を呼ぶ。
私が何をどうして欲しいかなんて解りきっているのに、敢えてそう聞き返す。それが彼のやり方だった。
私の願いはいつも聞き入れられない。
「もう、止めて───」
身体の痛みか、はたまた心の痛みか。何故こんなにも暴力を奮われなければならないのか、そう思うと自然と瞳には涙が溜まり、ついには溢れ出していた。
彼はそれを酷く辛そうな眼差しで見て、涙を掬うように頬に舌を滑らせる。
泣かないで下さい、と物悲しい声を出して彼は言うが、結局私にはその真意は汲み取れない。
「───ひふみさん、」
名前を呼ばれる儘に彼を見上げた。
しかし涙が霞をかけたようになっていて明瞭(はっきり)と表情は窺えない。
するり、髪から手が離れたと同時、顎を掬われ唇を重ねられた。
愛翫バイオレンス
これが僕なりの愛し方なんです。