敵とこだわる理由

ボク達は初めて会った時から敵だった。
そして今も敵同士だ。

敵に無駄な感情を抱くのは決して良くないこと。
それはよく分かっている。
…だけど、今はこんなに必要としてしまっていて。
依存している…と言っても過言ではなく、まさにその通りだ。

初めて会ってから、練習試合が多いために何度も会っている現在、その時よりも依存している。
当時は、特に何もなかったけど。
ただ少し気になってはいた。
初めて会ったはずなのに、なんだかそんな気がしなかったから。

互いに惹かれあって…なんてロマンティックなんだろう。
でも、試合にはそんな感情なんて必要ないんだ。
邪魔になるだけ……
邪魔だって分かっているけど。

「名前…!また会えて嬉しいよ。」
そう言って微笑む彼の顔は、本当に嬉しそうに輝いていた。
「ボクも…嬉しいよ。」
“また会えて嬉しい”って言ってもらえる、誰かに必要とされているということがボクにとって最高の幸せだ。
「大好きだよ、名前…ずっと一緒にいたい。むしろこっちにきたらいいのに。」
そう迫られても困る。
「そうしたいけど…」
「やっぱり無理か…ごめんね。」
「…うん…」

「…じゃあさ、一緒に居れる時間を大切にしなきゃね。」
そう言って彼は、いきなり抱きついてきた。
急だったし、そういうのに全く慣れていなかったから、つい軽く叩いてしまった。
「…ご、ごめ…!!」
「こういうのも駄目なの…?」
「え、えっと…」

「…(´・ω・`)」
何故か彼は急に軽くキスをしてきた。
「…?!」
あまりに予想外すぎたので自分の思考とか全てが止まった。
「俺も悪いけど、叩いたからキスくらい、いいよね?」
「よ、良くない…!」
「何で?」
「だってボク達、やっぱり敵同士だから。こういうのは良くない…」

「敵だとか関係ないよ。もう今更手遅れだ。」
「………だけど…」
敵じゃなくなったら、ボクは…今以上に依存してしまうだろう。
何だか怖いな。
「もう俺は止まれないよ。」
「…。…ヒロトの馬鹿。」
「どうしたのいきなり。」
「馬鹿馬鹿…」
「何なの…?;」

「ボクだって…ヒロトとずっと一緒にいたいよ。だけど、このままじゃ…」
「…?」
「このままじゃ、ボクも止まれなくなる。」
「止まれなくなったって良いじゃないか。」

今ならまだ間に合う。まだ引き返せる。
今以上に依存しないうちに、ひどくならないうちに…
「また会いましょう。…敵として。」
無理矢理にそう言ったボクは微笑んでいるつもりが、…泣いていた。
そしてそこから逃げ出した。


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