小鳥の顛末 霧裂き騒ぎが始まってしばらく。やっとご飯を使っておびき出し捕まえた相手は、小さなハーピーの女の子。 こんなに小さいと警察に連れて行っていいものか迷い所で、しかも兄さんが「ちょっと話聞きたいんだよねー」なんて言うものだから、とりあえず我がマードック家に連れてきたけど。 …さっきから兄さんと兎姿のオニキスがしてる尋問、女の子がどうも怯えてるようで全く進んでる気配がない。 念のため下がっててと言われてちょっと遠巻きに様子を見てたけど、どうも大丈夫そうだし私も近づいてみた。兄さんももう警戒は解いたのか、一瞥しただけで特に止める気配もない。 「で、兄さん、何か分かった?」 「んー、この子が人間苦手ってくらいかな?」 「お前が無意味に脅すからだろう」 「兎は黙って?」 2人がこんな調子なら怯えるのも仕方ないかな、なんて目を向けると、涙目でびくりと身を竦ませられた。 …なんだか、こっちが悪いことしている気分になるわね…。 なんて変ないたたまれなさを味わっていたら、ああそう言えば、なんて兄さんが付け加えた。 「なんか住むところもないっぽいねー」 「え、じゃあ、この子これからどうするの?」 「ほっといてまた騒ぎ起こしても困るし、この町の誰かの家に住んでもらおうかと」 一緒に住んでればそのうちじっくり話も聞けるでしょ、とちょっと投げやりな調子に言う兄さんにまた適当な…と呆れつつ、まあそれが一番いいかもしれないわねなんても頷く。 散々騒ぎを起こした後で、うまく受け入れてもらえるかは心配だけど…まあ、この町なら大丈夫な気がする。 そう考えてちらっとオニキスに目配せすると、無言で女の子に向き直って質問を投げかけた。 「今のところのこの町での住処の希望は? 無ければ適当に決めるが」 「…おうち? わたし、住む? ここの町?」 「ああ」 「………クッキー、パン、おいしいとこ」 考えたのかちょっと間を開けて返ってきた答えに、兄さんと2人で顔を見合わせる。 たぶん今まで掠め取った食べ物の味を思い出して言ってるんだろうけど…それだけだと思い当たるところがたくさんあって絞れない。 と、そんな私たちの様子を見て言葉が足りないと思ったのか、女の子はまたおずおずと口を開いた。 「雪のおねえちゃんと、みどりいろの子がいるとこ」 「…仕立て屋さん?」 「…アイビーとアンネちゃん?」 付け足された説明にまた2人で一瞬目を合わせて、同時に口を開いた。どうする?と言った調子でこちら投げられたオニキスの視線も加わり、ちょっとした沈黙が私たちの間に下りる。 それを見てか、またびくっとして不安げに見上げ首を傾げる女の子。 …うん、このままここで悩んでても仕方ないわ。 「えーと、部屋はまだ余ってたはずよね…兄さん、私とりあえず連れて行って訊いてみるわ」 「ありがとう…でも、」 「大丈夫よ、…ねえ、もうあんなことしないでしょう?」 心配しているらしい兄さんを制してそう問いかけると、小さく彼女は頷く。 うん、いい子、と頭を撫でて、そう言えばまだこの子の名前を知らなかったのを思い出した。 「うっかりしてたわ…私はイヴリンよ、あなたは?」 しゃがんでちゃんと合うように目線を下げると、まだ怯えて見えるけど、でも一瞬しっかりと合わせて彼女はその名を言った。 「…アエロ。アエロっていう」 ――――――― これにて"霧裂き"の噂は終了となります。 投稿数・ポイントともに目標に達成したため、霧裂き改めハーピーのアエロがクラージスに住むことになりました。 (実は投稿ポイントとは別に、作品に登場するごとに1+偶数作品の場合さらに1ポイントをお子さんごとに集計して、アエロからの友好度を集計していました。 その結果を、彼女の住む場所や設定に反映させていただきました。 また、この文章内でも一部のお子さんのお名前をお借りしています。 問題がありましたらご連絡お願いします…!) [Top] |