今日は何も収穫が無かった。 最近霧の頻度を上げて誘ってはいるが…なかなか遭遇できないことが多い。 内心多少の焦れも感じながら屋敷へ戻ると、床に寝そべっていた兎が私の足音を聞いてかぴくり、と耳を動かした。 その様子に、先日のやりとりを思い出す。 『この前聞いた声だけど、何となく子供の声みたいじゃなかった?』 『…みたい、ではない。子供、恐らく女だろう。あの声だけ考えれば、な』 『ま、擬態してる可能性もあるよねー。なんか小さい影が見えた気がしたけど』 『知らん、自分で探れ』 人間だけでなく魔物も傷つけられたせいか、今回は珍しく兎が私に協力している…と言うか、結果的にそんな形になっているだけだけど。 まあそんな訳で、あれも実際調査に出て声を聞いている…その上で女の子供の声と言っているのだ、間違いないだろう。 (さて、本当に子供なのか、はたまたそんな姿に化けてる何かなのか) 霧の向こうに思いを巡らせつつ、声をかけたところでお互い交わす言葉などないから、兎の横を黙って通り抜けて自室へ向かう。 まあ、正体が何であろうと私は割とどうでもいい。 (何であれ、うちの妹泣かせた分はきっちり思い知ってもらうことに変わりはないしね?) |