春待ち | ナノ

春待ち


年が変わって、何となく背筋も伸びるような気がするこの頃。
ですが…。

「…兄さんは本当に何も変わってないわね…」
「んー?」

暖炉の前のソファにぬくぬくと陣取ってのんびりしている兄を見て、イヴリンはため息をつきました。
全く動く気が無いと、変な覚悟が見えるようなその姿は、妹としてもなんだかちょっとだらしなく見えてどうにかしたいものです。

「そうやってまた、締め切り前になって大慌てするんだから…」
「慌ててないよ? あれくらいの時期になって急にやる気が出てくるだけで」
「それを慌ててるって言うの!」

とりあえず仕事の話を振ってみたものの、やはりと言うか何と言うか、笑ってかわされてしまいました。
こんなやり取りを続けているここ最近。
最初はもっとシリルを動かそうと積極的だったイヴリンも、もうだいぶ投げやりになってきているようです。

はあ、ともう1つ大きなため息をついて、まったく…と諦め顔で彼女は首を横に振りました。

「…いっそお嫁さんでももらえば、多少はきりっとしてくれるのかしら…?」
「うーんどうだろうね? て言うか、そんなことを言うイヴはどうなの? 幸か不幸か、浮いた話聞いたことないけど…」
「…残念ながら、全くないわね」

呆れついでにイヴリンがふと漏らした呟きから、今の自分たちの様子を考えて肩をすくめる兄妹。
と、曖昧に苦笑していたシリルが、ふと何かを思いついたような顔をして言いだしました。

「…それじゃあ、今年のバレンタインに本命あげたりもらったりしなかった方が負けね」
「………え?」

その、あまりに色々と唐突な提案に一瞬フリーズするイヴリン。

「え、ちょっ、兄さん?」
「ああ、ペナルティーは…その時に考えればいっか。じゃあ、お互い頑張ろうねー」

そう言ってひらひら手を振りながら、おもむろに立ち上がってシリルは部屋から出ていきます。

「え、ええー…?」

最初の目的通りやっと兄が動いたのですが、突然の提案に混乱するイヴリンには、それを気に留める余裕もありませんでした。


―――――――

1/10〜2/17までのテーマは「春待ち」です。
気まぐれにされたシリルからの提案に、だいぶイヴリンは混乱している様子ですが…ひとまず恋愛関連のテーマと言うことで。

昔の恋バナを肴にお酒を飲んだり、結婚するならどんな人ー?と盛り上がったり、町での恋の噂を追いかけてみたり…。

もしかしたらここから春が始まったり、する…かも…?

(2/1:期間延長しました)

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