北風の便り | ナノ

北風の便り


「おはよう、今日も早いですねー」
「ああシリル、おはよう」

吐く息が冷えた空気に白く浮かぶ、まだ少し暗い早朝。
いつものように、散歩に出たシリルが花屋さん店先で店主に挨拶をしています。

そのまま少し世間話をして、ふと、彼は赤くなったシュトルヒの指先に目を留めました。

「最近めっきり寒くなってきたけど…水仕事は大変でしょう?」
「はは、さすがに長いことやってるし慣れたさ」

気遣うように言われ、シュトルヒは苦笑して肩をすくめます。
その様子に、ああそう言えばこのひとは自分や妹の生まれるよりも前からここに住んでいたんだ、とシリルは改めて実感しました。

「…さて、そろそろ朝ごはんの準備をしなくちゃ。君も身体が冷えたらまた風邪引くだろうし、そろそろ行った方がいいよ」
「またって…いつの話ですよー?」

そして随分と昔の話をほんのりと出され、彼もまた、苦笑い。
でも、不思議と嫌な気分はしません。

「まあ、そろそろ行きますね」
「ああ、たまにあったかい昼間とかにもおいで?」
「それは、気が向いたら」

冷たく澄んだ空をほんのりと暖める太陽が昇り、今日も一日が始まります。


―――――――

11/5〜12/31までのテーマは「北風の便り」です。
めっきり寒くなり、段々と冬めいてきました。雪や霜柱なんかも、ちらほら…。

暖を取るため皆で鍋パしたり、雪遊びなんかも楽しんでみるといいかもしれません。


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