夏の朝霧 | ナノ

夏の朝霧


「ちょっと兄さん、あの霧どういうこと?」
「あ、気づいた?」

ある日のこと。朝の散歩から帰ったイヴリンは、真っ先に兄に詰め寄りました。
曰く、霧から兄さんの変な魔法の匂いがしたもの、とのこと。

少しこわい顔で近寄る妹をよそに、彼はにこにこと答えます。

「だって、いつまでたってもなかなかひと来ないでしょ。
だから、こっちから迎えに行ってみたらどうかな、って」

…どうやらシリルは、町に立つ霧に魔法をかけて、よそのひとをこの町に迷い込ませようとしているようでした。

「…それってひとさらいじゃないの?」
「導かれるのはこの町が必要なひとだけだから、大丈夫だよー」

呆れてしまったイヴリンのつっこみもなんのその、兄はどことなく得意げです。
ここで、ふん、とオニキスが鼻を鳴らしたのが聞こえました。

「お前にしては珍しく考えたな」
「君に褒められても全っ然嬉しくないけど、ありがとう」

盛り上がる2人を横に、イヴリンから出るのはただただ深い溜息。

「…もう、知ーらない…」

…そう言っても、後で走り回ることになるのは彼女なのですが。
妹は今日も大変です。



―――――――
今月(7月27日〜8月31日)の話題は「夏の朝霧」になります。
シリルが霧に、違う場所と繋がり、そこにいるひとを呼び寄せる魔法をかけたようです。

出会いやこの季節の話題、朝霧とは書いていますが他の時間に霧立った時のできごとなどをテーマに交流していただけたら、と思います。


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