初々しい恋 10題 | ナノ


きっと夢中にさせるから


 俺は容姿が整っているという自信がある。中学生ながらもモデルをやっているのだから、それくらいの自信は持ってもいいはずだ。
 そして、中学生ながらもモデルをやっているという人間に対しての接し方は大体限られてくる。女の子は大抵きゃーきゃーと黄色い声で俺を応援してくれる事が多い。けれど反対に男は嫉妬心丸出しにするか、もしくは馴れ馴れしく媚びるように寄ってくるかだった。全員がそうだとは言わないけれど、大きく分けるのなら大抵の人はこうだった。
 そんな中で、俺を含めたキセキの世代と呼ばれる彼等は違っていた。つかずはなれず、友達として俺に接してくれた。そんなキセキの中でも多分、赤司っちだけは友達、チームメイトとしての接し方とは少し違っていたような気がする。かと言って先にあげた二つのタイプでも無かった。

「赤司っちって不思議な人ッスね」
「そう? そんな事はないよ」

 仕事柄審美眼を鍛えられている俺でも、赤司っちは整っている顔をしていると思う。イケメン、とか男前、とかそういう事を言いたいんじゃない。多分、顔や体のパーツが整っているんだと思う。バランスが良いんだ。例えるなら精巧な美術品みたいな。どんな表情を浮かべてみても、美しいと思えるような。そんな整った顔立ち。
 そんな整った顔した彼が、恋をしたらどんな表情を浮かべるんだろうか。俺にはとてもではないけれど、想像できない。

「赤司っちって、恋とかするんスか?」
「ふふっ……、黄瀬は面白い事を言うね。オレが恋、ねぇ」

 うーん、と考える素振りは見せてくれるものの、多分赤司っちの反応からして多分今現在恋はしていないんだろう。けれど、俺の予想を斜め上にした答えを赤司っちに返された。

「そもそも、何を定義して恋と呼ぶのかな。誰かに対して好意を抱いた時? そうだとしたら俺は浮気者になるかもしれないね」
「どういう事ッスか?」
「オレが好意を抱いているのはキセキの世代の彼等だけだよ」
「へ?」
「勿論、お前も含めて、ね」

 赤司っちの整った顔で、にっこりと微笑まれてしまっては、こちらの方が緊張する。けれど、いつもと変わらない余裕な笑みに、あ、からかわれてんのかな、という答えに行きつく。……よし、そっちがからかってくるのなら、のってやろうじゃないか。

「俺、気が多い人嫌いッスよ?」
「おや、オレはお前達がこんなにも大好きなのに?」
「俺は俺だけを見てくれる人が好きッス」
「じゃぁ、オレを夢中にさせてごらん? そうしたら、お前だけを見て、追いかけて、捕まえてあげるよ」

 何もかもお見通しだと左右で色の違う瞳が笑う。穏やかな微笑みを浮かべているくせに、俺にはどうしようもなく意地悪に見えるそれに宣戦布告してやる。



 ――モデルの本気、見せてやろうじゃないか。




[!]


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -