※圭、海、中二設定

「ぼく、おおきくなったら、うみのこと、まもる」

そう言いながらにっこりと笑った、圭。(※幼稚園のころ)
私、津田海は、坂井圭がずっとずっと大好きな訳で。
あの時、私はなんて言ったのか覚えていない。
(たぶん、嬉しすぎて死にそうになっていたに違いない)
私は少し微笑みながら、息を吐いた。

「海、溜息吐いたら幸せ逃げるべ」
「今のは溜息じゃないの」

圭は、にっこりと笑って、そうか、とだけ言った。
私は、圭のことが好き。
…なはずなのに、なぜか、面と向かうと、素直になれない。
口を開けばうるさいだの、嫌いだの言ってしまう。
そんな私を、なぜ圭が見捨てないでいてくれるのか、よくわからない。

「海」
「なに」
「ツンデレ、ってやつだな」
「っは?」

圭はまた、さっきと同じ顔で笑った。
(何それ。)
私は口をきゅっとしばると、ぷいとそっぽを向いた。
圭はけらけら笑いながら、

「今のは褒めたんだよぅ」
「ほんと?」

私がくるりと振り返ると、圭の、眩しい笑顔。
思わず目を瞑ってしまいそうになるくらいに、眩しい笑顔。
(私は圭の、そんな所が大好きなんだ)
私も圭に釣られて、にっこりと笑う。
圭は一瞬びっくりとした顔になってから、

「俺、海の笑顔が好きだ」

と言ってまた笑った。
「好き」という言葉にいちいち心臓が縮み上がるのだから、
私にとって「好き」という言葉は毒でしかない。
なのに、私の心は嬉しい嬉しい、と悲鳴をあげるのだった。

「わたしも、圭の笑顔が好き、大好き」

圭はまた、びっくりした顔になった。
私が慌てて、

「あっいや、べ、別に深い意味はっ…」

そう弁解すると、圭は照れくさそうに笑った。

「海、ありがと」
「…べ、別に…」
「今日はやけに素直でお兄さん嬉しいよ」
「全然お兄さんじゃないでしょ」

圭は、悪かったな、と言ってから、舌をべぇ、と出した。
私も真似して、悪いよ、と言ってから、舌をべぇ、と出した。
二人で同時に吹き出して、一緒に笑い合う。
そんな時間が、すごくすごく大切で、嬉しかった。



(いつか言えるといいな)
  (素直に、「圭、好きだよ」って)