進撃 | ナノ
今日も今日とてじりじりと太陽が猛威を振るうなか中庭を通る。
職員室に用があるからといって近道に中庭を選んだのは大きな間違いだったと気づいてももう遅い。
そうしてコンクリートの照り返しに瀕死になっていると、涼やかな水の音と見慣れた姿が目に入ってきた。
「マルコ!アルミン!」
「ああ、ナマエ!いいところに」
「何やってるの?」
「プール掃除だよ」
フェンス越しに話しかければ、2人がこちらにやってきてくれた。
アルミンの手にはホース、マルコの手にはブラシが握られていて、彼らの言う通りプール掃除をちょうどはじめるところなのだろう。
あれ?でも2人は水泳部じゃないような気が…そんな考えが顔に出ていたのか、アルミンが苦笑しながら「生徒会としての仕事だよ」と教えてくれた。
「そういや、うちの学校水泳部ないもんね」
「いや、あるにはあるんだけど…今はちょっと色々あってね…はは…」
「?そういや、マルコ。さっきいいところに、って言ってたけど…」
「ああ、そうそう。ナマエ、今手空いてる?よかったら手伝ってもらえないかな」
真夏にプール(掃除だけど)、とても魅力的なお誘いである。それにちょっと楽しそうだ。
あ、でも今日着替えもってないしどうしよう…「涼しくて気持ちいいよー」「やる!」
マルコの一言を聞いた私の決断は早かった。
***
「お待たせー!」
「早かったねナマエ、――ってジャン?」
「うん、暇そうだったから連れてきた。」
そうそうに職員室での用事を済ませて、プールに向かっていたらジャンに会った。
部活が休みになって暇になった、とかぼやいてたからじゃあちょっと来いよ、と連れてきた訳ですよ。人手は多いほうがいいだろうし。
「よし、ジャンはブラシ担当ね」
「は、何でお前がホースなんだよ」
「何でって…ブラシ掃除してムキムキになった幼なじみなんてやでしょ?」
「なんねぇよ」
「なる。ジャンはかよわい女子がむきむきになってもいいの?」
「かよわい女子?どこにいんだ?ん?」
「むきーっ!」
「はいはい、二人とも。いいから早く始めるよー」
わざとらしく周りをきょろきょろするジャンにむっとして、水をふっかけようとホースを構えたらマルコに首根っこを掴まれてずるずると引きずられた。(もちろんジャンも)
マルコ…どこにそんな力が…アルミンがびっくりして見てるよ…
唖然とするアルミンの横を通り過ぎると、目的地に着いたらしいマルコがやっと手を離してくれた。(苦しかった)
「はい、ここが二人の担当ね。ちゃんとやるんだよ」
「「…了解デス。」」
やたら笑顔のマルコが怖いので二人そろって返事をする。ここは大人しく掃除を…
「…するとでも思ったか!くらえ、ジャン!!」
「だと思ったぜ!甘いなナマエ!!」
「なっ?!」
マルコの隙を見て勢いよく水が出ているホースをジャンに向ければ、それを予期していたのかビート板を盾にしたジャンに返り討ちにあった。
というかどっから出てきたんだよそのビート板。
「残念だったなぁ、ナマエー!」
「くっ、卑怯なりビート板…!」
ぼたぼたと水滴のたれる髪の間からジャンを睨むように顔を上げると、いままで大笑いしていたジャンが顔を少し赤らめて私から視線をふいっと外した。
…ああ、そっか私いまYシャツしか――「ナマエ、それじゃ風邪引いちゃうよ。これ着て」
ふわっと肩にかかるやわらかい感触、振り向けばアルミンが立っていて肩には手が置かれていた。どうやら彼がパーカーをかけてくれたらしい。
「僕がさっきまで着てたもので申し訳ないんだけど、」と言いながらさりげなく前を隠してくれる、なんて。
「ナマエは女の子なんだから、こういうことも気にしないとダメだよ。」
「う、うん…あ、ありがと…」
突然された女の子扱いと、振り向いた時の男らしいアルミンの表情に鼓動が早くなるのがわかる。
…あれ、何だろ、これ。
訳もわからず高鳴る心臓を押えながら、…パーカーの裾をぎゅっと握りしめた。
撃ち落とされた感情は、
(ジャン、いくら幼なじみだからといって女の子にやりすぎだよ!)
(あ、ああ、すまん…)
(ナマエ、とりあえず保健室に着替えもらいに行こうか)
(わ、わかった)
(なぁ、マルコ…)
(…何だい、ジャン)
(俺、アルミンがモテる理由わかった気がするわ…)
(…奇遇だね、僕もだ)
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NG
「ところで水泳部って誰なんだ?掃除してる連中に見当たらねぇけど」
「アニとユミル…」
「「(ああ、なるほど…)」」
イケミン!イケミン!
支部で見る大人イケミンに心を奪われすぎている。
彼の様々な可能性に夢を抱かざるをえない。将来(色んな意味で)有望だね!←
最後のイケミンを書きたいお話だったのに、前ふりめっちゃ長かった^▽^
20130707