進撃 | ナノ
暑さで溶けてしまいそうだ。
そんなことを考えながら椅子のせもたれに思い切り仰け反る。
廊下側後ろから2番目の席。後ろの住人はまだ登校していないので思う増分仰け反ることができる。
白い首元を天に仰がせながら暑さに耐えるように目を瞑っていたらふと陰りを感じる、片目だけをそろりと開ければのぞきこむようにしてこちらを見る逆さまのジャンと目が合った。
「おい、口開いてんぞ」
「へ」
突然のことに驚き間抜け面のまま固まっていれば、口の中に突っ込まれる冷たい何か。
「やるよ」と爽やかに言われたのはいいが、
しみる、しみる、知覚なんちゃらつらい。涙目になりながらそれを抜き取れば夏の風物詩のアレ。
「アイスキャンディー?」
「ああ、部活でもらった。」
少しかじったんだけどよ、歯にしみたからナマエにやるよ、と言いながら私の後ろの席に鞄を置くジャン。っておい、これ食べかけかい!
「うわージャンと間接ちゅーしちゃったーうわー」
「そんな喜ぶなって」
「喜んでない!絶望してるんだよ!!」
「まあ聞け、俺の食べかけを食べると頭よくなるぞ」
「まじか」
そう言われて手に持ったアイスキャンディーをまじまじと見つめてしまう。…確かに(認めたくはないが)ジャンは頭の良い方だ。そんな彼のご利益のついたものを食べればあるいは…
「いいから早く食え、溶けんだろうが」
「むぐっ」
そう言って再び突っ込まれたアイスを大人しく咀嚼していたら、ジャンのいった通り少し溶け始めていたアイスが液体となって手首を流れる。
こぼれる、と思った瞬間にはもう色素の薄い髪の毛が目の前に広がっていて、手首を生暖かい感触が這っていた。
「…ったく、だから言っただろ」
溶けるって、そう言って私の手首から舐め取ったアイスの滴を指でぬぐい、ぺろりとなめるジャン。その一連の動作に顔が熱くなるのがわかる。ご丁寧に脳内ではスローモーションで再生されているだと。やめろ脳みそ、相手はジャンだぞ。
そう頭の中で毒づいてみても顔のほてりは冷めることはなく、私は急いでアイスの残りを飲み込んだ。
青い春に溶ける。
(ん?おいナマエ、何か顔赤ぇけど大丈夫か)
(…っ、)
(やっぱアイス1本じゃ暑いのは変わんねぇよなー)
(いや、そうじゃな)
(悪ぃな、今度は2本買ってくるわ)
(え…?部活でもらったんじゃ)
(!)
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ライナーのひとりごと。
「あいつら…あれで付きあってないんだぜ…」
NG
「ジャン、ナマエに変なこと吹き込まないの」
「マルコ!」
「それにナマエ、それだったらジャンよりアルミンの食べかけのほうがご利益あるだろ?」
「確かに!」
「おいマルコ」
どっちかっていうとジャンさんをペロリしたいでs
20130704