「凜ちゃん…?」 数年ぶりに見かけた幼なじみに声をかければ、振り向いたのも束の間、目が合ったにも関わらず歩き去っていってしまった。 「凜ちゃん、待って!」 いつこっちに戻ってきたの、とか、元気だった、とか聞きたいことはたくさんあるのに彼の足は止まらない。 「凜ちゃん!凜ちゃんってば!」 どんどん小さくなる背中に呼び掛けながら必死に追いかけるも、開いた距離も一向に縮まらず、いまはもう運動部でも何でもない私の足はとうとうもつれ、道の真ん中で思いきり転んでしまった。 「凜っ…ちゃ…っ」 擦りむいた膝がじんじんと傷む。…それと同じくらい心もじんと痛むのがわかる。 無視されたのが悲しかった訳ではない、ただ遠ざかる彼が昔とは別人のようで、…なぜだかとても悲しかったのだ。 (…道の真ん中で何やってんだろ、) 地面に倒れこんだまま、…早く起き上がらなければと思うのに意思とは反して動こうとしない身体。 (…昔もこうやってよくこけたっけ。) それで地面に突っ伏して泣きじゃくる私を、凜ちゃんがよく引っ張りあげてくれたんだよなぁ、…何て、感傷にひたっていたら少しだけ目頭が熱くなってきた。 「りんっ、ちゃぁ…ん」 涙が頬を伝い地面に吸い込まれる、その瞬間 突然、身体が強い力に引っ張り上げられた。 呆然としてその力の正体を見やれば、そこにはとうに去ってしまったと思っていた彼の姿があった。 「…ったく。相変わらずどんくせぇな、なまえは」 そう呆れながらも服についたほこりやなんかを払ってくれる。 「凜ちゃ、っどうして…?」 「あ?散々人の名前を、しかも年頃の男をちゃんづけで呼びまくる迷惑な声が急に止んだから、おかしいと思って見にきたらこのざまだったんだよ」 見にきてよかったぜ…なんてぶつぶつ言いながらも、それでも、助けに戻ってきてくれたことが嬉しくて、止まっていた涙がまたぼろぼろとこぼれだした。 目の前の彼は一瞬ぎょっとしたあと、ため息をつきジャージの袖口で乱暴に顔をぬぐってくれた。 「転んだくらいで泣くなよ」なんて言いながら。 泣いてる理由はそんなんじゃないのだけれど、 呆れながらも心配そうにする彼の顔が昔の記憶の彼に重なる。 …ああ、彼は変わってなどいなかった、 嬉しくなって思わず笑みをこぼせば、たちまち怪訝そうになる彼の表情。 「…なーに、笑ってんだ」 「…凜ちゃんも変わってないなぁ、って思って」 「は?」 「そういう優しいところとか」 「っ!…うるせぇ、ていうかいい加減ちゃん付けはやめろ」 そう言って、少しだけ赤くなってそっぽを向いたその姿が無性に愛しくて、彼の首に思いきり飛びついた。 「凜、おかえり!」 「…おう」 変わらないもの、 ---------- 世話焼き凜ちゃん。 何だかんだでお兄ちゃん肌な凜ちゃんぷまい。← 彼にも大きな可能性を感じざるをえない。 NG 「はっ!凜ちゃんが帰ってきたことみんなに報告しなきゃ!」 「は?おいちょ待」 「…凜ちゃんなう、と…」 「おい」 リンちゃん違い。 NG2 「……もしかして、ちゃんづけで呼んでたから振り向いてくれなかったの?」 「…………悪いか」 「!〜〜くっ、凜ちゃんかわい、い…ぶはっ!」 「笑うな!」 20130715 |