家の前に傷だらけの青年がいた。 扉にもたれかかりうつむいている為顔は見えない。服は所々裂け、下からは生々しい傷跡が見え隠れしている。…都内の混乱から逃げ延びてきたのだろうか、明らかに誰かと戦闘してきたであろうその姿はひどく痛々しい。 ぴくりとも動かない様子に一抹の不安がよぎる。 荷物を放り投げて近寄り、肩に手をかけ軽くゆさぶりながら声をかける。 「…ねえ、君!大丈夫?!…生きてる?」 顔を覗き込み頬に手をやれば、かすかに感じる吐息。 …よかった、生きてる。 ひとまず安心して一息ついていると、力なく開かれる瞼から除く瞳と視線が合う。 「あ、っれぇ…何俺、もしかして、天国きちゃった…?」 「…て、んごく?」 「だって、さぁ、こんな綺麗なお姉さんがいるってことは天国、っしょ…?あ、それとも実は、閻魔さま、…とか?…ははっ!聞いてねーよ、閻魔さまがこんな美人、とか…、」 「は、え?、何言って」 目を覚ました青年は弱々しく口を開いたかと思うと、息も絶え絶えに天国やら閻魔様やら、完璧に自分があちら側の住人になったこと前提で話はじめる。…仮にここが天国か地獄だとしてこんな状況で冗談めいたことを言える彼はなかなかのつわものだ。 「(ってそういうこと考える場合じゃなくて…!)と、とりあえずここは天国でも地獄でもないから、だからっ」 「え、?…あー、俺生きてん、の…?」 「そう!生きてる!だから早く傷の手当、…っ!?」 しよう、と言い切る前に彼の身体が倒れてくる。気を失ってしまったのかと思いあわてていると、「あー、そうか…俺生きてんのかー…、」とつぶやく声と、力ないながらもくつくつと耳元で聞こえる笑い声。何がおかしいのかわからず、思わず?マークが浮かぶ。 「(そんなことより…!)…とりあえず手当てするから、中に入って。立てる?」 「…ははっ、おねーさん、俺のこと拾って、くれるの…?」 立ち上がらせようと手を回すと自嘲気味な声聞こえ、少しばかり眉をひそめる。 「…拾うも何も、怪我人が目の前にいるんだから助けるのは当然でしょ、」 「……っ、でも、俺…は…」 「…事情はあとででいいから、」 行くよ、と途中急に黙ってしまった彼の言葉を待たずに、傷だらけの身体をゆっくりと立ち上がらせた。背負うような形で彼を支えつつ、鍵を探す。 その間もずっと黙っている彼の様子が気になって、後ろを振り向こうとしたら弱々しい力で後ろから抱きしめられた。 「…あり、が…と」 肩にうずめられた頭からひどく小さな声が漏れる。 …肩口が少し濡れたように感じたのは、きっと私の…気のせいだろう。 (優しさが滲んで消えない、) ----------------------------- NG ぐーきゅるるる 「…おねーさん、俺のこと拾ってくれたらおいしいご馳走たくさんつくってあげる☆」 「し、仕方ないなぁ…!」 当初の予定はこんな感じでした。…あれ?← 20130305 tnx E.G. |