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あまりにも彼女が同じものばかり作るから、見かねた俺は簡単なメニューを少し教えた。
そしたら彼女は目を輝かせて「縢くんすごい!いいお嫁さんになれるよ」とよくわからない褒め言葉をくれた。…つかそれ言うんならお婿さんでしょ。


それ以来、彼女は料理に目覚めたらしく俺の部屋へ来てはせっせと料理をつくっている。


「ど、どうかな…?」
「…ん、うまい!俺この味好きかも」


そう言えば「本当に?よかった」と嬉しそうに笑う彼女。
最初の頃に比べてずいぶんと上手くなっていて、「腕上げたねー」と伝えれば、「先生がいいからだよ、」とはにかんで笑う彼女につられて俺も笑う。


彼女が料理を作りにくるようになって、こうやって作ったものを味見し合ったりする様になった。それは今では当たり前になっていて、そのまま一緒に食事することも当たり前になっていて、気づいたら日常の一部みたいになってた。


…たとえば俺が普通のやつみたいに結婚したとしてそんな生活を送れたとしたらこんな感じなのだろうか、とふと考える。


朝起きたらキッチンに彼女が立ってて、テーブルの上には朝ごはん。後ろから彼女の名前を呼べば笑顔で振り返って「おはよう」って言ってくれる。

テレビの中だけで見たことがある情景が浮かび、思わず苦笑する。
俺の頭そろそろやばいんじゃね?
…ああでも幸せってそういうことなのかな、て柄にもなく思ったり。


「なまえちゃん」
「ん?」


名前を呼べば彼女が笑顔で振り返る、いまこの瞬間、目の前で。



あー…俺いま超幸せかも。




(どうしたの?一人でにやけちゃって)
(んー何でもねぇよ?…それより、ほーら!冷めちゃうから早く食べちゃおーぜ!)
(?…ふふっ、変な縢!)




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(きっと幸せってそういうこと、)

彼の幸せを切に願う。


[baCK]




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