小説 | ナノ






「…先生?」


控えめな声と共にガチャ、と扉の開く音でゆっくりと意識が浮上する。
ソファに寝転んだまま顔にかぶさっている本はそのままに、いまだぼんやりとする頭をはたらかさせて考える。

…あれ、おかしいな。今日は診察の予定はなかった、…はず。


「…そんな所で寝ていたら風邪引きますよ。」


今日の予定をうつらと思い出していたら、やや呆れたような声が部屋に響く。
この声は―――

…宜野座執行官?

……はて、執行官ともあろう彼が何の用だろうか?
以前のように定期的なカウンセリングは必要ないし、セラピーを行う必要もない。

彼がここに来る理由とは…


−−だめだ、
いくら考えても答えは見つからない。
もともと寝起きの頭だ。考えたって仕方ないだろうと開き直りふたたび瞼を閉じようとした−−−瞬間、

突如ギシ、と軋むソファの音と足の間に感じる重み。
顔にかぶさっていた本は取り上げられ、突然開けた視界におもわず目を細める。


「起きていたのなら何か言っていただきたかったんですが…」

妙に近くに聞こえる声を不思議に思いながら、徐々に光に慣れていった目をこらす。…と、彼の困ったような微笑みが目の前に広がっていた。


「っ…!」


…通りで声が近いはずだ、
ソファの背に手をかけ、軽く覆いかぶさるようにして顔をよせる彼の姿がそこにあったのだ。
この状況をうまく把握できない私はただ固まって目を見開く事しかできなくて、それを見ていた彼にとってはさぞおもしろい光景だったのだろう。本を置いて空いた手を口元にやり笑いを抑えているようだった。…何だかちょっとイラっとする。


「おはようございます、先生。…っ、」

「…一体何の用ですか。まさか人の顔を見て笑いにきたんじゃ」


そう不機嫌そうに言えば、「違いますよ」と穏やかに微笑んだあと、彼は私の髪に手をやりふわふわと毛先を弄びながら、かわいらしい寝ぐせだなって、と笑んだままの顔でそう言った。


「なっ…!」


驚きのあまりそれ以上言葉が出ず口をぱくぱくさせていたら、髪を撫でていた手がすっと離されついでに彼の身体も私の上から離れた。安堵の息をもらせば立ち上がった彼から聞こえてくるくすくすとした笑い声。


「すみません、少しからかいすぎました」


本当だ、まったく。朝からこんな目に合うなんて。そうじと目で訴えかければ申し訳なさそうにしながらも「元はと言えば先生が無視するからですよ」と言われてしまった。いやだって今日は診察の予定はない…から、って、


「…宜野座さんは、結局何の用で…」

「理由がなきゃダメですか?」

「え?」

「ただ先生に会いたかっただけなんですが」

「は」


さも当然のように言い放った彼は首をかしげこちらを見つめている。
…ああ、もうこれは何をいってもダメなパターンだ。
彼の目を見てそう悟った私は現実逃避をするかのように目を閉じようとする、と


「…先生、」


少し声色の低くなった声が私を呼び止める。その声に一瞬戸惑うが私の決意は固い。…もう私は寝る放っておいてくれ。そう心の中でつぶやき固く目を閉じれば顔の横に感じる気配。嫌な予感。


「あんまり無防備な格好をしていると…襲っちゃいますよ?」


…そう耳元で囁かれた瞬間、飛び起きたのは言うまでもない。



バッドモーニングコール


(…飛び起きた瞬間小さく残念、という声が聞こえたのは、)

(…うん、きっと気のせいだ。)




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執行官宜野座です。彼は執行官なって優男になってればいい。うへへ←
というか天然を装った計画的タラシ…とかぷまい。(私が)
彼は無限の可能性を秘めていますよ敬語ぷまい。


執行官宜野座におおいなる夢を抱かざるをえない。


…え?みんなそうだよね?←


あ、ちなみにヒロインはカウンセラーです。なので先生って呼ばれてるんですな。

20120624