act.01
「…っ…嫌!!」
私はベッドからばっと体を起こした。髪から、額から一滴また一滴と汗の雫が落ちていく。
(あぁ、また夢…)
空は今日も青く、蝉の大合唱が私の耳に届いた。額からぐいっと汗を拭って気付く。
(あ…また震えてる)
小さく、細かく振動する両手を並べて見れば、自分の無力さが身に染みる気がした。別に現在進行形で悩み事があるわけでもなくて。本当に不思議と。
しいて言うなら、毎晩の様に見る…見ているような気がする夢だ。夢の内容なんて最早覚えてなくて。夢なんてそんなものなんでしょ…?
私は窓辺に立って空を仰いだ。攻撃的な日差しが目に刺さる。
見ている時は覚えているようで、目を覚ますと覚えてなくて。ただ、薄ぼんやりとした原型すら留めてない事が普通だと思う。目を覚まして、そこに残るのは『怖かった』や『幸せだった』など抽象的なもので。具象的に覚えていることは少ない。
(取り敢えず、シャワーを浴びようかな…?)
此処でうだうだ夢の内容を考えていても仕方がない。そう思い、私はもう一度空を見上げた。取り敢えず、暑いけど良い天気。
「今日も良い日になりそう!」
私の髪を心地良い風が揺らした。それだけで、元気になる私。どれだけ単純なんだろうなぁ…なんて思いつつ、シャワーに向かう。