act.10
夕飯がそろそろ出来そうなので皆を呼ぼうと思い、加熱していたコンロの火だけを止め、部屋に向かう。まず初めに、とカノの部屋をノックした。
「おい、カノ夕飯出来たぞ」
「うん、今行くよー」
と返事をするものカノは何時も直ぐには出てこない。なので、俺はいつも通りにセト、マリー、ヒノと順番にノックしていった。
「キド、今日の夕飯なにー?」
「肉じゃがだ」
とてとてと質問しながら歩いてくるマリーに大皿に乗った肉じゃがを渡す。メカクシ団内のルールで、片付けと準備は皆で手伝うことになっているんだが、今手伝ってくれているのはマリーとセトだけで。
(カノはどうした、カノは)
ヒノの方は先程、呼んだ時に返事が無かったからと覗いて見ると眠っていたので、それは放って置こうと思い、敢えて起こさなかった。しかし、カノは返事しただろ。
「キド、準備できたっすよ?」
「あ、あぁ…」
テーブルの上の食器を見てみると、どうやらカノの分も準備していた為、はぁ…と溜め息を吐いた。
「ちょっとカノを呼んでくる、先に食べていてくれ」
「分かったッス」
***
「…お前、一体どうしたんだ?」
「え?やだなぁ…どうしたって何が?」
「いや…」
これは絶対聞くレベルだろ、と。元々カノの部屋は質素な感じで、本とかもちゃんと本棚に収納されていた筈だ。だけど今はそんな部屋の面影が一切無い。床にぶちまけられた雑誌。はたまたビリビリに破られているものもある。ベッドの上のシーツはそこを殴ったかの様に、何ヶ所かに頂点を置いてそれに向かって皺になっている。枕は扉の近くで呆然と立ち尽くす俺の横にあった。
(恐らく、投げたんだろうな…)
一方、カノは何時もの笑みでこちらを見ている。
「カノ…」
一通り部屋を見回して改めてカノを見つめた。
(今のコイツは欺いている…)
そんな俺を見てカノはふっと鼻で笑って、やれやれ、といった表情をした。
「キドは見抜くのが早いなぁ」
「見抜く以前に、この部屋見たら誰もが気づくだろ」
「あははwwまあ、そうだよね」
「…それでカノ…」
「分かってるよ、キドにはちゃんと話さなきゃね」
―――変わり始めた僕らの事を。