act.04
無意識だったんすよ、と。一人になったアジトのリビングに居るのはセト。

自分でも、何であんな事―カノの手を弾くような事をしたのか理解が出来なかった。今でも、理解が追いつかない。ただ、ヒノとカノが触れ合うのが嫌な気がして無意識のうちにカノの手をヒノに触れる前にと、触れさせまいと、弾いてた。俺自身、気がついた時には空気が凍り付いているのを感じた。

「あーぁ、何やってんすかねー?」

何て言いつつ、アジトのソファーに凭れ掛かって。ぼんやりと天井を見つめた。

(恐らくあの話がきてんすかね)

「ははwwそれ以外あり得ないじゃないっすか」

と、独り言を呟いて苦笑いが止まらなくて、常に口角が上がってる状況。

そう、あの話―――カノの告白。何で俺に言ってきたかは最初は分からなかったけど、現在メカクシ団に男が一人しか居ないっすからね、そうするのが妥当…なんだ。





*****





「セト、ちょっと相談があるんだよね」
「相談?カノがっすか?」

バイトから帰宅して、現在アジトのリビングには俺とカノの二人っきり。他の女子メンバー(と言っても3人しか居ない)は久し振りにヒノのバイトの休みが取れたからとかで買い物に出かけてしまった。

俺は、ちょっと間って下さいっすと言い、キッチンに向かった。長話になる可能性を考えて、一応お茶ぐらいは出す必要があるだろう、と。

「お茶入れてきたっす。それで相談って何すかー?」
「うん」

カノは一呼吸置くようにお茶を口に運んで、一口飲むとゆっくり言った。










「僕、どうやらヒノを好きらしいんだよね」










「え?」

幼なじみの一言で一瞬鈍器で殴られたような衝撃的を感じた―いや、何で衝撃なんて感じてるんだ?まぁ、そんな事はどうでもよくて、俺の口から出たのは間抜けな気が抜けたような変な声だった。それと同時に俺の笑顔もピシィッと停止していたようで「どうしたの?そんなに固まって」と珍しくカノに心配された。

「あ、いや…何でもないっすよ!」
「そんな事を言いながら、笑顔は営業用になってるよ?」
「ま、まさかー、そんな事無いっすよ!」

なんて言ってみるけど、自分でも気がついていた。営業スマイルになっていること。

(まぁ、カノに嘘を吐けたこと無いっすからバレてんだろうな)

ただ、分からない。何で今、自分が営業スマイルをしているのか。

(本当…何なんすか)

冷や汗の様な雫が背中を流れ落ちる感覚。
息苦しくなって、少しでも気を紛らわしたかった。だから、立ち上がって『お茶、冷めちゃったっすね!入れ替えてくるっす!』と無理矢理、理由をこじつけてキッチンに向かう―とする前に、カノの声が俺の体を、心を行かせまいと縛るように絡みついてきて。

「ねぇ、セトもヒノが好きなの?」「…な、何、いつの話をしてんすか!ヒノの事なんか好きじゃないっすよ!」

言葉の反面。
不思議だった。吹っ切れたと思っていた感情がまた押し寄せてくる。

(嘘だ。来るな来るな来るな来るな来るな!)

手が、足が、心が震える。ずっとずっと前に、皆と友達の関係のままで良いから、と封印した感情が溢れる。

「まぁ、どっちにしろさ」

よいしょっと、カノがソファーから立ち上がる音が聞こえて、カツカツと自分の部屋に向かう足音が聞こえ

「ヒノを譲る気はさらさら無いから」



バタンと扉が閉まる音が聞こえた。



***



頭にこびりついて離れないカノの言葉「―――ヒノを好きらしいんだよね」たった一言なのに、俺の頭を体をあの時からずっと隅々までリフレインしている。

(認めるしか、ないんすかね…?)

もう、あの頃とは違うようで、皆が大人になって行ってて。何時までも子供なのは、自分だけ何じゃないかと、悩む。この仲のいいメカクシ団を壊したくないからと、こっそり隠した記憶を思いを。

(どのみち、カノがヒノに告白して振られたら元の関係には戻れなくなるっすよ…?)

どうすればいい?俺はどうすれば…。ただただ、一人で頭を抱える。誰にも相談が出来なくて。

「仕方が無いっすよね…。」

俺は腕で目を隠す体制になって、深くソファーに沈むように凭れかかった。

自分がやるべき事なんて、きっと初めから分かっていた事だ。今更、うじうじ考えたって意味がないのも知ってた。

(後でカノに謝らなきゃならないっすね、後バイト。今日の夕食当番は誰だったっけ?…でも取り敢えず今は)

静かに寝たいと思った。昨日も今日もバイトな深夜帯のものもあるので。俺はゆっくり目を閉じた。



加筆修正:20141010
| TOP | NOVEL | LIST |
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -