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▼ 彼と恋がしたいの

◎ボカロPとボーカロイド設定

 パソコンから目を離すと視界が少し滲んでいるような気がした。今、目を巡らせた所で、うちのメインボーカロイドのレンはお仕事という事で居ない。
 また、今日も全力でパソコンと向き合ってしまった…。はあ、と溜め息を吐いて眉間に手を当てて揉む。
 私がボカロPを初めて、早くも数年が経つ。その間に、名前も少しづつ皆に知られるようになったんだけど。その反面、嫌な思いもあったりして。私の主に書いていた楽曲は恋するものばかり。それが、今は何故か書けない。いや、書けない理由なんて分かってる。

 「マスターとボーカロイドの恋、か…」

 全ての原因。でも、私の全てでもあったりする。私が今まで書いた楽曲はレンに言って欲しい、思ってて欲しいものを詰め込んだものだったから。そう考えるともう、恋する新しい曲は書けないのかもしれない。

 「なまえ、何を考え込んでんの?」

 ふっと玄関から声が聞こえてきた。ああ、レン帰ってきちゃった。

 「おかえり、レン。ううん、ちょっと私事かな?」
 「私事?私事な…」

 とっさに誤魔化そうと適当に曖昧な返事をする。
 だって、言えない、言えるわけが無いじゃない。レンの事を考えてたなんて。どうせ、私達のマスターとボーカロイドなんだから。
 ふうん…とレンが言いながら、横を通り過ぎて中に入っていく。こんな感情は、おかしいのかな。通り過ぎたレンから薫ったのは、女物の香水。人と関わる仕事だから仕方ないって理解しているのに、嫌だ、と思って、胸が締め付けられる。

 「曲、書いてたんだな」
 「うん、新曲」
 「そう言えば、お客様が最近、なまえの曲は失恋ばっかりで、もっと恋愛する楽曲を聴きたいって言ってたな」

 うん、そう、リスナーさんがそんな風に言ってるのは知ってる。Wikiのコメントとかにも書き込まれてたし、ツイッターでも質問された。でも、でもね、書けないんだよ。もう、書けない。好きだから。レンが好きだから。レンに言って欲しい、幸せをいっぱい詰め込んだ曲が他の人に聴かれるのが、怖くなっちゃったから。
 視界が揺らいで。一筋の涙が落ちたと思ったらもう止まらなくなってしまう。

 「なまえ?…なまえ!どうしたんだ!?」

 慌てて駆け寄ってきてくれるレンにも嗚咽が零れる口からは返答が出来なくて、手で“大丈夫”と伝える。
 いつから、こんなに歪んじゃったんだろう。私のレンだって考える様になったんだろう。ボーカロイドと人の恋愛関係は、責められるものじゃないのに勝手にダメだって、決めつけたりして。それは、レンを他の人に渡したくないから作り上げた自己保身のルールだって気づいてるよ。でも、そうでもしなきゃレンが離れていくようで怖くて。

 「ねえ、なまえ」

 一方的に話すから、聞いて。そう、レンの声が耳に届いたと思えば、優しく握られる手。一瞬で悪い気持ちが止まった気がした。

 「なまえが何を考えているか、僕には分からない。けどな、覚えておいて欲しいんだ。……僕はなまえを置いてどこにも行かないから。絶対、なまえの側に居るから。」

 不意に握られた手を引っ張られる。私の体は、少し大きいレンの中にすっぽりと収まって。

 「…なまえが好きだから」

 ちょっといつもより、空気を含んで震えた声。ああ、一緒だったんだ。レンも…レンも私と一緒の気持ちを抱いてくれてたんだ。それがなんだか心地いい。

 「レン、私も好きだよ」

 落ち着いて、言葉に出来た。ぎゅっと締まる腕の力。

 「うん、もう、大丈夫」

 そう言って、私はレンに笑いかけた。



彼と恋がしたいの
(次の新曲は愛の歌)



◎久々過ぎて訳分からない感じなんですが、せっかくなので此方に



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