Short | ナノ


▼ 君の罪を私に

 


「ねぇ、僕の事好き?」



突然、そんな事を言い出したカノさんに私はただびっくりして言葉が出なくなってしまった。つい先ほどまで普通に話していた筈だ。カノさんはいつもの様に、アジトのソファーの上で雑誌を顔に被せて、足をソファーの端にある手を乗せる所にかけて寝ころんでいる。

「どうしたの?カノさん」
「質問の答えになってないよ。僕の事好き?」

顔に被せていた本を少し上げてカノさんが私を見てくる。その目には少し寂しそうな色が浮かんでいて。

(嫌いなわけがないよ…)

最近のカノさんはよく寂しそうな顔をする様になった。皆がいる、普段は欺いているから知っているのは彼女の私だけ。

「大好きだよ」
「…僕の、どこが、かな?」
「全部」

私は全ての質問に即答で答えようと身構える。カノさんの心中は全く分からないけど、そうするべきだと思った。

「あのさ、僕で良いのかな…?」
「何がですか…?」
「なまえの彼女だよ」

何を言っているのか私には理解が出来なかった。今までずっと団員にこそ隠していたけどこっそり付き合っていたから。それで、お互い充分だと思っていたから。

「そんな事、言わないで下さい…」
「なまえ…」

私は涙脆いな。既に今からでも流れてしまいそうなぐらい目に涙を貯めていた。

「カノさんで良いんじゃないんです…カノさんじゃなきゃ嫌なんです…。」
「でも、僕は嘘吐きだよ?」
「そんなのは、関係が無いですよ…初めから知ってる事じゃないですか…」
「なまえ…泣かないで」

カノさんが私の頭をポンポンっと撫でた。伝えたいことはいっぱいあるのに、涙で言葉が出ない。そんな私にカノさんは語り始めた。

「僕は、変わりたかったんだよ。なまえに似合う男に…嘘を吐かない男に…それが、なまえの為だった思ったからね。…でもさ、どうやら変われないみたい。」

カノさんはぎゅうっと私を抱きしめる。その手にはいつもより力がこもっていて、少し震えてた。

「別に良いんですよ…カノさんは無理に変わらなくて良いんですよ…」
「なまえ…」
「私は、今のままのカノさんが好きです。大好きなんです…だから、そんなに無理をしないで下さい…。」

すると、カノさんは私の体を抱きしめて

「愛してる」

そう、呟いた。だから私はカノさんの腕から離れて真っ直ぐ見つめる。いつもいつもカノさんは笑っていて、人を騙したりする事もあるけど、真は凄く良い人で。

(大好き、大好き…!)

私は思わず、カノさんに触れるだけのキスをした。あの、ロミオとジュリエットのジュリエットもこんな気分だったのかな?

「これで、同じです。たとえカノさんが自分の心を感情をそれを出す口を恨んで、汚れているとか思っていたとしても、これで、カノさんの嘘吐きは私にも移ったから一人じゃないですよ?」

そう言うと、カノさんはぷくくっ…っと言って笑い出した。

「何それ?ロミジュリ?微妙にセリフが違うよね?でもさ、ありがとう」

なんて言ってカノさんが笑うから私もつられて笑ってみせた。すると、グイッとカノさんに腕を引っ張り上げられて。カノさんの息が顔にかかる程の至近距離。

「でも、それは僕の罪だからね。そろそろ返させてもらうね♪」

そう言ってカノさんはキスをした。



【君の罪を私に】



(でも、なまえって本当にロミジュリが好きだよね?)
(あ…う、うん)
(僕もそれ聞いて読んでて良かった。読んでなかったらなまえにキスできなかったしね♪)
(え…!?///)


 

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