Short | ナノ


▼ その恋愛は不可能で黒に染まるのが決定事項




※なまえさん病みます
※失恋ネタです






 『シンタロー!』


 勢いよく、シンタローの部屋の扉を開ける。あれ?今日はパソコンの前じゃないの…?
 部屋に居るシンタローは自分の勉強机の前に座って、恐らく取り出したんであろう、(机の引き出しが開きっぱなしだったから)写真を眺めていた。
 一瞬だけ、シンタローは私に首を回して見て、また写真に戻す。


 (何なのかな…?)


 私はシンタローの所に歩いて行ってその手元の物を覗き込んだ。シンタローは隠しもしない、私を見る事も無く写真を見つめる。






 ―――世の中には知らない方が良いことが沢山ある。






 写真には赤いマフラーをして微笑んでいる女の子。誰?その子…とも聞けなかった。シンタローのその子を見る目が真剣そのものだったから。一瞬で頭がフリーズした。シンタローは、一瞬私を見るがそれでも写真を見つめてて。


 「なまえ。」


 私の横でキイッと椅子が音を立てたのが聞こえてくる。シンタローが椅子から立ち上がった音…。

 …だけど……そう、聞こえただけ。何もそこからは起こらない。お姫様の様に抱きしめて、一番だなんて言われないし、触れようともしてこないシンタロー。せめてもの、弁解の言葉も無い。だから、思ってしまう。


 シンタローが分からないと。彼女になってから既に数ヶ月以上経って居るのに、シンタローは友達以上の関係を求めなくて。寧ろ、私と距離を置き始めてる気がする。
 じゃあ私は…


 ―――私はシンタローの何なの?


 分からない。分からない、分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない!


 心がどす黒い何かに浸食されているような気がして、気持ち悪くなった。だけど、そのどす黒いものは私を試すかのようにまだまだ広がっていく。

 (教えてよ、あの子は誰なの?シンタローは何を考えているの?)

 彼氏を疑うなんて、不謹慎ですか?別に良いでしょう、と彼女にあるまじき感情。
 後ろにシンタローが立っている気配がするのに、声が出ない。問い詰めたいって思ったのに、言葉が喉に詰まった。ポロポロと涙がいきなり流れ出して。
 心のダムが崩壊する。涙が流れ出して、止まらなくなった。膝から崩れ落ちた。冷たい目線が心に突き刺さる。


 (あぁ、此処は地獄ですか?)


「なまえ、そういう事だから」
『…っ、く…』



 やっとで、シンタローが発した言葉がそれだった。


 (じゃあ、何で付き合ったの?私をからかってたの?どうして、どうして…!!)


 「なまえの事は好きだ。だけど、俺はコイツの事を忘れられねぇ…んだ。」
 『…意味、分からないよ…っ、』
 「ごめん、直ぐには説明出来そうにねぇから」

 煮え切らない態度のシンタローにイライラと疑問がひたすらに募る。私は、どうして…シンタローに告白されたの?私は、その子の代わりなの何も理解が出来なくて時間が刻一刻と過ぎていく。
 部屋に響くは私のすすり泣きの声だけ。



 「でもさ、まぁ…なまえとは別れるつもりねぇから」
 『…っ、へ…ぇ…?』



 この期に及んでまだ私で遊ぶんですか?都合の良い玩具はまだ捨てたくない、といった風に?
 歪んだ感情の矛先が無い。自分の中に貯まるだけ。辛くなるだけ。もう、放って置いて下さい。



 「なまえ、お願いだから泣きやめよ」



 シンタローが私の手を掴んだ。パソコンを何時も打っている細い指、私に温もりをくれた手。

 ―――気持ち悪い



 『嫌だ、離してよ!』
 「…っ……」



 言葉に反応して離される手。どうして?何で無理に引き留めないの?あぁ、そっかぁ…。所詮、そのレベルの好きだったんだ。






 ―――これが終わるのに良いタイミングなのかもしれない。





 頭を過ぎった考えに私は忠実になっていた。すっかり、どす黒い感情に飲み込まれてしまった心。
 涙は恐怖で止まった。遊ばれている私が馬鹿馬鹿しくなって心の中で自重した。



 ―――大嫌いだよ、シンタロー



 『シンタロー…』
 「ん…?」
 『別れようか』



 思ったよりすんなりと言葉が出てくれた。あぁ、良かったと私は思う。目の前に居るのは目を見開いて驚愕の様な、嘲笑いの様な、切なさの様な、そんな感情を孕んだシンタローの顔。

 私はその場でくるりと回転してドアに向かおうとする。後ろからシンタローがバタバタと追いかけようとする音が聞こえるけど、もう知らない。声が、焦って柄にもなく大きな声が私の耳に届いた。



 「は…?ちょっと、俺の話を聞けよ!アヤノは…!!」
 『何なの?その子は。シンタローの何なの!!』
 「…っ…あ…」



 無意識下で怒鳴ってた。聴きたくない言い訳なんて。聴きたくないんだ。そんな事したって今更もう、このどす黒い感情は消えるわけ無いんだから。
 ドアを私は開けて、半身廊下に出して最後に一言。





 『さようなら、シンタロー。二度と会いたくない。幸せにね。』






▼ その恋愛は不可能で黒に染まるのが決定事項

***

 スランプで失敗しました。本当長い駄文を申し訳ありません。
 シンタローは恐らくアヤノを忘れることは出来ないという妄想から。
 始めの予定は甘終わりだったのに、病んじゃったよ、なまえさん。
 オチが不安定。


 

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